超高機能なオンラインお絵かきサービスとして知られつつある、その名も『SUMO Paint』。名前もさることながら、その機能は月並みをはるかに超えた正に"横綱級"と言って過言ではない。
実は相当前にレビューの依頼をいただいていながら、はや数週間。もちろん、レビュー記事を書く際にそのサービスを使ってみるのは当然のこと。機能・性能、使い勝手、どう活用できるか、などを考えながら一通り使ってみるのが通常だが、今回はそんなこと以前にとにかく絵を描くのが楽しく、ついやりすぎてしまった。こんなに遅くなってしまったのはひとえに自分が仕事であることを忘れるほど本気で遊んでいたから……です。編集部Iさん、申し訳ないです。
充実の描画機能はオプションが多彩
トップページの左側、あやしげな相撲取りがにっこり笑う画像をクリックすると、お絵かきWebアプリ「SUMO Paint」が起動する。表示されるパレット類は、なんとなく馴染みのあるものばかりだ。Adobe PhotoshopやPainterなどの画像系ソフトを使用したことのある人なら、基本的な操作は説明無しで使えるだろう。業界標準並みのインタフェースからしてクオリティが高すぎる。
とくによく作り込んであるのがブラシツールで、単なるお絵かきを逸脱した高機能ぶり。ブラシパターンのうち、メインで使うブラシ、ドライブラシ、油彩などはそれぞれ数種類のタッチが登録されており、透明度(Opacity)と流量(Flow)を調整可能。また、同じブラシでも「Brush Style」や「Post Effect」の設定でタッチが変化するなど、オプションが多彩だ。こうした設定を使うことで、かなり表現の幅が広がる。今こそペンタブレットの使い所! だが残念ながら筆圧感知には対応していない。なお、今回の作例はほとんどWACOMのFAVO(A6サイズ)を使用している。
描いた作品は「Ctlr+S」で自分のアカウントに保存されるほか、ローカルに保存することも可能。また、アカウントに保存した作品の再編集や、ローカルにある画像を開いて編集することもできる。
マウスだけでも作品作りを楽しめる
ブラシツールを選択したときに、オプションバーの右端に「Symmetry」というチェックボックスがある。これをチェックすると、ブラシの描画が「Symmetry Points」の回数分画面上で反復されるようになる。例えば、画面中央から上に1本線を引けば、画面上では放射状に描画される。様々なパターンブラシや3Dブラシ、エフェクトなどを使いながら描いてみると、マウスを適当に動かすだけで思いがけない模様ができたりしてなかなか楽しい。同サイト上にはこの機能を使って描かれた作品がたくさん投稿されている。
高機能ぶりのもう一つの理由は、レイヤー機能の存在だ。レイヤーがあること自体がすごいが、レイヤーモードのクオリティはPhotoshop並み。レイヤーモードは、"色を重ねる"描画に適応する演算子を変えるようなもので、色セロハンのように重ねる「Darken」や、暗い部分ほど下が透けて見える「Screen」など様々な効果を利用できる。
Symmetry機能やレイヤーモード、フィルタを活用して、マウスだけでも幅広い表現が楽しめる |
線画にアニメ塗りするときは、塗りのレイヤーを「Darken」にすると下の線を浸食せずに隅まで着彩できる (C) Crypton Future Media, Inc. |
この他にも色調整やフィルター機能が充実しており、絵を描くだけでなくローカルから写真を取り込んで加工するにも十分活用可能なアプリといえる。ただ、ちょっと惜しいのはショートカットに対応していない点だ。やはりブラシや消しゴムの持ち替えはキーボードで済ませたい。また、ツールオプションのスライダは1~256までが均等に割り付けてあるため、とくに筆の太さでは小さな数字の微調整がしにくい。
絵心よりも楽しむ心で遊べるサービス
WebサービスとしてのSUMOは、ギャラリー+メッセージングの機能を持っている。他のユーザーが描いた絵を閲覧し、自分の「お気に入り」に入れたり「評価」することや、作品やユーザー宛にコメントを送ることも可能。お気に入りに入れた作品の作者から「Thanks!」とメッセージが来るなど、気さくな欧米のユーザーとのちょっとしたコミュニケーションを経験できる。
このサービスで特徴的なのは、自分の作品を編集可能な状態で公開できること。他のユーザーが編集可で公開している作品は、"リミックス"することができる。レイヤー情報も保持されているので、様々な加工が可能だ。もちろん、オリジナルが勝手に上書きされるわけではなく、別の作品として自分のアカウントに保存される形となる。
「My messages」では、自分のページまたは個々の作品に寄せられたコメントが一覧できる |
木のアイコン(Show image versions)をクリックすると、派生作品を一覧できるようになっている (C) Crypton Future Media, Inc. |
「Images」や「Rankings」のページで他のユーザーの作品を閲覧していると、その表現の多様性や個性に、世の中こんなにも才能豊かな絵師が多いものかと感動せずにはいられない。評価を競い合うのではなく、ただクレヨンや絵の具を使うのが楽しかった子どもの頃のような気持ちで"遊べる"お絵かきサイトとして楽しんでいるユーザーも大勢いる。ツールのクォリティとコミュニティのゆるさが、Webらしい自由さ・懐の深さを感じさせるサービスだ。