ADI(Analog Devices)は4月28日、通信および産業機器、携帯機器向けに10/12/14/16ビットのデュアルチャネルA/Dコンバータ(ADC)18品種を製品化したことを発表した。すでにサンプル出荷を開始しており、量産は2009年5月より順次開始される予定。価格は1,000個受注時で5.00ドルから、となっている。

新たに発売されたデュアルチャネルADCのパッケージ画像

アナログ・デバイセズのホリゾンタル・セグメントグループ コミュニケーション グループ マネージャーである馬場智氏

同社日本法人であるアナログ・デバイセズのホリゾンタル・セグメントグループ コミュニケーション グループ マネージャーの馬場智氏は、「世界のコンバータの売り上げ予測は、2009年~2014年のCAGRで12.5%であり、その中でもADCは最大かつ最速の成長部門。中でも10MSPS以上の高速ADCの市場のCAGRは15.5%と高く、50MSPS以上のもののニーズも増大している」とし、そうした現状に対応するための今回の新製品群投入であるとする。

今回投入されるのは、いずれもパイプライン型のデュアルチャネルADCで10ビット品「AD9204BCPZ-xx」(xx部分がサンプリングレートであり、20/40/65/80MSPSにそれぞれ対応)が4製品、12ビット品「AD9231BCPZ-xx」(同20/40/65/80MSPS)4製品、14ビット品「AD9251BCPZ-xx」(同20/40/65/80MSPS)4製品および「AD9258BCPZ-xx」(同80/105/125MSPS)3製品、16ビット品「AD9268BCPZ-xx」(同80/105/125MSPS)3製品の計18製品となる。

各製品の型番と分解能、サンプリングレート、価格、消費電力

いずれも9mm×9mmのLFCSPを採用。AD9268とAD9258、AD9251とAD9231とAD9204のそれぞれがピン互換となっているほか、AD9258とAD9251の一部もピン互換となっており、システムの要求性能に応じてADCを交換することが可能となっている。

新製品18品種の分解能とサンプリングレートの相関図

これらの製品は、従来のバイポーラプロセスと比べ、より微細化が可能なCMOSプロセスを採用。線幅も0.18μmとすることで、低消費電力化を実現している。これにより、「パッケージの発熱量が抑えられるようになり、システムベンダはシステムサイズの低減、過電流保護機能といったパワーマネジメントの簡素化、マージンの拡大などによる信頼性の拡大などが可能になる」(同)とする。

同社の高速ADCの消費電力の変遷(14ビット 65MSPSでは2000年時の製品と比べると新製品は1/20程度の電力しか消費しないで済むようになっている)

また、同製品がターゲットとする各アプリケーションごとに、「無線インフラストラクチャでは、システムの総消費電力の低減による『グリーン化』ならびに、ラックの小型化などによるオペレータ業者の総コスト低減。スペクトル・アナライザなどでは、小型化の実現、バッテリ寿命の延長。非破壊検査などのX線装置といったハイエンド画像処理装置ではシステムの集積化・小型化」(同)といったことが可能になるという。

低消費電力については、AD9268では、例えば125MSPS時で1チャネルあたり競合製品比50%減となる376mWを実現。また、内蔵ディザー機能により、通常時のSFDR性能88dB(70MHz)を95dB程度に向上させることが可能となるほか、入力周波数250MHzまでの範囲において78.3dBFs(70MHz)のSNR性能を実現している。さらに、1.8V単電源動作を実現しているほか、1.8V CMOSもしくはLVDS出力をサポート。このほか、SPIにより出力データフォーマットなど(例えばデータとクロックのタイミング波形の調整や、後段へのオール1/0の信号送信といった)さまざまな機能の設定や選択が可能となっている。

AD9268の特長と機能ブロック図

一方、AD9251の消費電力は、80MSPS時で競合製品比60%減となる86mW/チャネルとなっている。これについて馬場氏は「プロセスの微細化もあるが、そのほかにも性能に見合った回路の最適化、不要な部分の見直しなどが効果を発揮している」と語る。

AD9251の特長と機能ブロック図

AD9251は1.8Vアナログ電源に対応するほか、1.8V/3.3Vのロジックに対してデジタル電源1.8/3.3Vの設定でサポート。独自のS&H(Sampling & Hold)回路を採用することにより入力周波数200MHzまでの範囲で高いSNRとSFDRを達成することが可能という(70MHz時でSNR73.5dBFs、SFDR85dB)。

競合製品とAD9268、AD9251の比較

このほか、同社では評価用プラットフォーム(価格は200ドル)の提供も行うほか、別売りのデータキャプチャボードを用いることでPCとのデータのやり取りが簡単になるという。

また、同社では同社の技術者が、実験を行い得られた回路情報を、カスタマに提供する「Circuits from the Lab」を展開。これは同社製品の組み合わせを用いて回路を構築するための組み合わせ回路例であり、すでに実験済みであることから安心して製品に組み込むことが可能となっている。このほか、ADC向けツールとして、実際のアプリケーションでどの程度の性能を出せるのかを調べることが可能なADCビヘイビア・モデル「ADlsimADC」や、PLLシミュレーション「ADlsimPLL」、「ADlsimDiffAMP/ADlsimOpAMP」などといった設計ウィザード各種、入力インピーダンスの算出法などを記したアプリケーションノードなどが用意されているという。