米Adobeにおいて、10年以上に渡り「Photoshop」開発チームの主要メンバーであり、デジタルイメージング関連のテクノロジーの全般に関わっている重要人物であるケビン・コナー氏。彼がPhotoshop CS4や未来のデジタルイメージについて語り尽くす。

ケビン・コナー氏は米Adobeにおいて、プロフェッショナル デジタルイメージング プロダクト プロダクトマネージメント担当バイスプレジデントという役職である。今回、コナー氏はPhotoshop CS4に限らず、未来のデジタルイメージに関して、興味深い話を語ってくれた

「Photoshop CS4」の新機能で変化するクリエイターのワークフロー

――まず、コナーさんにお伺いしたいのですが、「Photshop CS4」、「Photoshop CS4 Extended」でどのようにデジタルイメージの世界が変わったと認識していますか?

ケビン・コナー(以下、コナー)「これからの話ですが、Photshopによって、デジタルイメージの世界がどのように繋がるのかが興味深いです。私達は、これからのデジタルイメージの世界をコンピューティショナル・フォトグラフィーと呼んでいます。これは、撮影時により多くのメタデータを入手し、新たな写真を作り上げる。たとえばパノラマ写真、複数の写真を1枚の写真にフィッティングしていくという作業です。これらは、従来のカメラでは出来ない事でした。Photshop CS4の機能の中で、コンピューティショナル・フォトグラフィーとして上げられるのが、コンテンツ認識型の拡大・縮小機能。コンテンツの高さや横幅をインテリジェンスに変えていく。見かけは非常に自然なままで、画像を歪ませない処理がCS4では可能になりました」

――今回、特に注目されている、3D機能の強化に関してはどうですか? CS4から、様々な作業がPhotshopの中だけで行えるようになりました。

コナー「Photshopは様々な職種のプロの方々が使い、また様々なワークフローの中心に位置しています。Extendedで何を実現しようとしたかというと、既存のワークフローの強化です。その良い例がビデオと3Dの分野です。勿論、かなりパワフルになったとはいえ、Photshopだけでは、完全な3Dツール、ビデオツールの役割を果たせるとは思っていません」

――完全な物ではないとのことですが、今回の機能強化によって、Photshopなどを使用するクリエイターのワークフローの内容にも、強化だけでなく、変化が出てくると思うのですが。

コナー「それは、その通りです。今回のPhotshopでは、様々な新機能や改良が加えられていますが、それはアドビ製品を使ってくださっているユーザーの皆さんに牽引されて加えられた物であるといえます。例えば3DオブジェクトのテクスチャーマッピングなどにPhotshopを使うというケースが多いと思います。CS4では、ライブでテクスチャーを見ることが出来て、ペインティングも出来ます。作業終了後は、他の3Dアプリケーションにエクスポートすることも出来る。3Dのプロでなくても、他の人が作ったモデルを取り込んで、テクスチャーを張る、レンダリングを変えるなどして最終的なイメージをPhotshopで完成させるというのが可能になりました。確実にワークフローの内容にも変化が出てくる思います」

――端的な例かもしれませんが、デジタルイメージの世界では、今後、フォトグラファーのワークフローもさらなる変化を求められるような印象があります。

コナー「もうすでに、テクノロジーによりフォトグラファーの仕事の内容や役割は大きく変わっています。それはフォトグラファーにとっても素晴らしいことだと思います。現在、フォトグラファーは自分の作品の仕上がり、イメージまで自分でコントロールできるようになっています。多くの人が質の高い写真を撮影できるようになり、また、フォトグラファーでない人も、ローコストで質の高い写真をオンラインで入手できるようになりました。これまで以上にプロのフォトグラファーにはプレッシャーが強くなっていると思います。自分の写真を目立たせ、質を上げていかなければならない。だからこそ、これまで以上に、彼らをサポートするテクノロジーが重要になってくると思います」