アーティストやデザイナー、写真家などプロフェッショナルだけでなく、多くのハイアマチュアにも愛用されているデジタルペインティングソフト「Corel Painter」の最新版、「Corel Painter 11」が5月22日に発売されることになった。21日に行われたコーレルによる発表会の模様も含めて、Corel Painter 11について、紹介してみたい。

独特の描き味と表現力、直感的な操作やカスタマイズ機能等で多くのクリエイターに愛用されているCorel Painter。過去に重ねられたバージョンアップでは、既存の機能がなくなり、また後のバージョンで復活するという事例や、使いやすさに関してユーザーから賛否両論の声が上がったということもあった。今回のバージョン11では、「アナログ画材と遜色のないリアルな描き味」、「かつてない表現力をもたらす高機能デジタルアートツール」というキーワードに加えて、「ユーザーのフィードバックと共に進化」が特徴として上げられた。

発表会でプロダクトマネージャーのロバート・ロナルド氏はユーザーへのヒアリングの重要性を説いた

表現と効率からのアプローチ

上記のキーワードを受け、今回新たに加えられた機能では、表現面と効率面の両面からのアプローチがなされている。表現面として特徴的なのはブラシの強化。40種ものブラシが追加されたことも上げられるが、ペンの角度を斜めに傾けて側面を使うことで陰影をつけることができる「ストローク幅制御機能」や、ペンの動きを速めるとストロークが細くなり、緩めるとストロークが強くなるといった機能も追加された。また、同色の重ね塗りも容易に行えるようになるなど、よりディテイルにこだわった、直感的な表現が可能になった。

操作面では、カラーパレットやミキサーパレットの表示サイズを変えることができるようになった。各ユーザーが使いやすい表示サイズに変更可能で、色を効率的に管理/微調整できるようになった。また、ブラシコントロールに新たに追加された「ハードメディアコントロール」で、描点サイズ、移行範囲、傾き角度、ストローク幅などのカスタマイズが、より細かく簡単な操作で可能になった。

ブラシのカスタマイズができるハードメディアコントロール

サイズの変更が可能になったカラーパレット

一度ペン先を離せば、重ね塗りができる

寺田克也氏によるCorel Painterの評価

発表会では、漫画家・イラストレーターの寺田克也氏がCorel Painter 11を用いてデモを行った。「Corel Painterをひとつの画材として使用している」と前置きしながらも、「Corel Painterは、自分にとってなくてはならないツール」と語った寺田氏。普段は、デュアルモニターで作業しており、片方はパレットの表示のみにつかっているため、今回のバージョンアップで追加されたカラーパレット表示の拡大機能を使いやすく便利な機能として紹介していた。また、絵の具で色を作るスキルをデジタル化したことで作業時間も短縮するうえ、「デジタル」という先入観を払拭するだけの表現力がCorel Painterの魅力でもあるとその良さをデモで説明した。

デモで人物の顔を描きつつCorel Painterの魅力について語る寺田克也氏

本当に"使える"バージョンアップか?

表現や効率といった面から新たな機能が多数追加されたCorel Painter 11であるが、実際のところ、今回のバージョンアップはユーザーにとって"使えるもの"であるのでろうか? 読者としては、そこが最も気になる点に違いないだろう。発表会でデモを行った寺田克也氏はその点について次のように語った。

「今回のバージョンアップでユーザーは、増えるでしょう。文句の付けようがない」

冒頭でCorel Painter 11の特徴として、「ユーザーのフィードバックと共に進化」というキーワードを上げた。それが、表現面ではアナログらしさというCorel Painterの特徴をより引き立てる機能として反映される結果となり、同時に、Corel Painterを「Photoshop」と併用するユーザーのために、ファイルをやりとりしてもカラーとレイヤーが保持されるなど、細やかな改良も加えられ、操作面でも効率性を重視した内容となっていることが伺える。

旧バージョンからの乗り換えを検討しているユーザー、新たにペイントソフトの導入を考えているユーザーにとって、Corel Painter 11はその需要を満たしてくれるだけの価値があるものであると言えるのではないだろうか。発売と同時に、ブラシのダウンロードができるサイトが開設されるなど、Corel Painterユーザーにとっては嬉しいサービスも提供されるようだ。

約2年を経て発表された「Corel Painter 11」