Oracle OpenWorld(OOW) Tokyo 2009の最終日となる24日、来日した米OracleプレジデントのCharles Phillips氏が基調講演のステージに登場し、「Strategies for Delivering Value (価値提供のための戦略)」と題して今後のOracleの企業戦略を説明するとともに、経済危機に直面する顧客ユーザーらがITシステムを利用して新たな価値を創造するための同社からのメッセージを発信した。

米Oracleのプレジデントを務めるCharles Philips氏。今回のSun買収にも大きく関わったはずだが、それについて多くは語らなかった

「今日、われわれは膨大な情報に囲まれており、ここで蓄積されたデータや情報は日々増加し続けている。蓄積された過去の知識やノウハウは財産であり、今後ビジネスを有利に進めていく基礎となる。だがここでの問題は、得られた情報を基にして経営者が適切な判断を素早く下さなければならないことであり、それが適切なタイミングでタイムリーに提供される必要があることだ」とPhillips氏は情報活用の必要性について訴えている。こうしたシステムの構築には膨大な情報を処理するためのきちんとしたインフラ、そして経営者や現場の人間が適切な形で情報の入出力を可能にする可視化の仕組みが重要となる。

同氏はここ最近のOracleの戦略として「Complete」「Open」「Integrated」という3つのキーワードを掲げているが、オープンな業界標準に準拠し、互いに統合された包括的なアプリケーションを含むシステムセットの提供こそが、顧客ユーザーに対してビジネス価値を提供し、ビジネスにおける差別化を実現する鍵となるというのだ。「こうした機能や技術は自社で開発することもあれば、その分野に長けた企業の買収で実現することもある。Oracleは過去5年間で55の企業の買収を行ってきた。先週発表された買収もその1つとなる。今後も必要に応じてこうした買収戦略を継続し、顧客に価値を提供していきたい」と述べ、先週発表されたSun Microsystemsの買収に触れつつ、これが企業買収の終わりではないことを示唆する。

こうした"Complete"なシステムスタックの中で、とりわけPhillips氏が重要性を強調するのがミドルウェアの分野だ。DBやアプリケーションの重要性はいまさら繰り返すまでもないが、拡張可能で安定したインフラを提供しつつ、ときにはアプリケーションでカバーしきれないニーズのギャップを埋める役割を果たす。「プロセスマネジメントなどに特化した企業や技術は数あるが、BIやコラボレーション、それらをカバーするWeb 2.0系のツールなど、包括的なソリューションは実現できていない。私は、ミドルウェアはソフトウェア業界の中でも最も"Fragmentation"(断片化)が進んでいる分野だと考えている。これらは互いに連携し、統合化されるべきだと思う。これによりユーザーがアプリケーションを活用するうえでのニーズのギャップを埋め、システム価値を高めることができる」と説明する。

アプリケーション活用におけるギャップを埋めるミドルウェアスイート群と、その一部であるBeehiveやWebCenterなどのコラボレーションツール

「ミドルウェアはソフトウェア業界の中でも最も"Fragmentation"(断片化)が進んでいる分野」とPhillips氏は述べており、これらは互いに組み合わせられ、統合されるべきだというのが同氏の主張だ

また同氏はシステムハードウェアでのトレンドについても説明する。現在でもなお大規模で信頼性の求められる環境で、メインフレームやプロプライエタリなシステムが多く稼働している。「これらをオープンでスタンダードなハードウェアで動作させることでシステムの導入/運用コストを削減し、スケールアウトによるシステム拡張に対応できる」と同氏は述べ、サーバグリッドのメリットを強調する。このほか先日発表したばかりのDB MachineとExadataについても触れ、DB処理に特化したストレージとサーバの提供で従来比50 - 70倍というパフォーマンスを実現するなど、スケールアウト以外のアプローチにも言及している。

経営者の迅速な意思決定を推進するソリューションを提供していきたいとPhillips氏。同氏の注目分野はBeehiveなどのミドルウェアのようだ