米Oracle製品開発担当シニアバイスプレジデントHasan Rizvi氏

Oracle OpenWorld(OOW) Tokyo 2009開催2日目となる21日、米Oracle製品開発担当シニアバイスプレジデント Hasan Rizvi氏が基調講演に登場して同社のミドルウェア戦略について説明した。DBやアプリケーションの影に隠れがちだが、ミドルウェアは同社の標榜する「Complete」「Open」「Integrated」の3つを実現するための根幹であり、ある意味で最も力を入れている分野でもある。2008年1月に発表されたBEA Systems買収もこのミドルウェア戦略の延長線上にあり、その製品群がいまもOracleの中で血肉として生き続けていることがわかる。

"ミドルウェア"とだけ言うと漠然としているが、Oracleによれば「開発ツール」「UI」「EPM(Enterprise Performance Management)」「Business Intelligence(BI)」「コンテンツ管理」「SOAとプロセス管理」「アプリケーショングリッド」「エンタープライズ管理」「アイデンティティ管理」などが含まれている。UIにはダッシュボードやWebポータルなど、フロントエンドのツールが含まれる。これらを包含したうえで、ミドルウェアの上の層にあるアプリケーションどうしを結びつけ、「オペレーション効率の向上」「プロセスの最適化」「統合されたインテリジェンス」「エンタープライズ 2.0」「セキュリティとリスク管理」といった個々のプロセスの最適化や信頼性の確保、そしてエンタープライズ 2.0の言葉にみられるようなWeb 2.0の概念を採り入れたコラボレーションツール群など、ユーザーにより身近な対話の場を用意するのがミドルウェアの役割となる。こうしたミドルウェアの製品戦略は時間とともに変化しつつあり、その変革とユーザーへの浸透度はある程度の相関関係にあるようだ。

この中でもおもしろいのがアプリケーショングリッドの分野だ。アプリケーションの層にあるデータやプロセスをグリッド化することでリソースプールを構成し、サーバの利用効率を向上させつつ、動作の信頼性や拡張性を確保、さらに通常のシステム刷新に比べて緩やかな形でアプリケーション同士の連携を可能にする。Rizvi氏が示したスライドにもあるように、同社ミドルウェア戦略でも最新のポートフォリオである。ここでアプリケーショングリッドの根幹となるのがOracleが2007年3月に買収したTangosolのCoherence、そしてBEA由来のOLTPであるTuxedo、WebアプリケーションサーバのWebLogic、JVMのJRockitである。OracleはBEA買収後にCoherenceを含むOracleのミドルウェア製品どうしの統合を進めており、互いの連携を可能にしている。アプリケーショングリッドはその成果の1つとなる。SOAスイートによるアプリケーションどうしの連携に加え、大規模システムにおける新たな可能性の1つとして注目の技術だ。

同社のミドルウェア製品とユーザーへの浸透度を表したグラフ

アプリケーショングリッドを構成する技術群。Oracle Coherenceに加え、WebLogic、Tuxedo、JRockitなどのBEA製品を組み合わせて仮想的なソフトウェアグリッドを構成する

BEA由来の技術であるComplex Event Processing(CPE)を使ったイベント・トラッキング・ツール(旧名:WebLogic Event Server)のデモ。複数の膨大な情報ソースからリアルタイムで条件抽出を行い、条件に合致したイベントを抜き出してダッシュボード上に表示する

さまざまな情報にアクセスするためのポータル的なツールとなるWebCenter。Oracleアプリケーションにアクセスするためのダッシュボードのほか、コンテンツ管理システムに連携した検索機能やドキュメント共有、ニュースフィードやディスカッションボード、WikiやブログなどのWeb 2.0系ツールなど、さまざまな情報ツールのフロントエンドとして機能する