積極的な買収戦略によってポートフォリオを拡充し、今やエンタープライズ向けのアプリケーションやソリューションを総合的に提供する最大ベンダとなったOracle。どのプロダクトも優れたものだが、Oracleのそもそもの出発点であり、現在でも常に高い評価を取得し続けているのがデータベースだ。同社の最新のフラグシップデータベースであるOracle Database 11gやOracle RACを高く評価する声は多い。
1984年から一貫してデータベースの開発に携わり、Oracle Database関係者の間では知らない人間はいないと言われるデータベース開発総責任者のAndy Mendelsohn氏がOracle OpenWorld 2009で最新データベース技術を題材に基調講演をおこなった。そこから興味深いトピックをお伝えする。
第1のテーマ - グリッド
複数のシステムが混在する環境において、予算要求をこなしさらにシステムをスケールさせる方法は簡単なものではない。そういった環境においてシステム統合を実現するための技術のひとつにグリッドがある。廉価なストレージでグリッドを構築することで、予算要求を抑えながら同時にスケーラビリティも確保できる。将来を見通して最初に高性能なH/Wを購入することは予算的に厳しい。しかし初年度には必要なH/Wのみを購入し、毎年必要に応じてH/Wを追加することができれば最終的にかかる予算を抑えることが可能になる。技術的にこの方法を実現する技術がグリッドだ。プロダクトとしてはOracle RACやOracle Database 11gが該当する。これらプロダクトに対する評価は高い。
グリッドといえばクラウドも似たようなところがある。壇上ではAmazonのクラウドサービスを例にあげ、こうしたサービスにもOracleが対応していることを紹介した。デモンストレーションでは、Amazonのクラウドサービスはクレジットカードを使って作成を始めれば、2分後にはシステムが構築され、5分後にはOracle Databaseが動作するようになる。いくつかのクリックと選択で、OracleデータベースがデプロイされたOSがサーバとして稼働しはじめる。壇上で実際にデモンストレーションが実施されたが、軽快にクラウドコンピューティングを活用したサーバが構築された。バックアップ先をクラウド上のディスクに実施する例も示された。
第2のテーマ - データウェアハウス
複数のデータウェアハウスが混在していると、結局のところ複雑なシステムが生み出されることになる。Oracleプロダクトで単一のデータウェアハウスを実現できれば、システムもシンプルになり予算も削減できる。最近では費用とされるデータの量も必要となる過去データの年数も伸びている。データウェアハウスが扱うべきデータは以前にもまして爆発的に伸びており、そしてこれがデータウェアハウスの本質的な問題といえる。データベースシステムそのもののスケールアップは提供されるが、最近では転送部分の方が問題になることが多い。増え続けるデータの転送部分がネックになる。
この問題に対する取り組みは、通信帯域を増やす方法と、転送するデータ量そのものを抑えるという2つの対策が考えられる。これに対するOracleのソリューションがHP Oracle Exadata Storage Serverだ。ストレージ容量のスケーラビリティを提供しつつ、なおかつ転送容量の増大にも対応している。OracleにとってH/Wプロダクトに進出した初の本格的なプロダクトとなる。
HP Oracle Exadata Storage Serverのデモンストレーションも壇上で実施された。壇上には実際にHP Oracle Exadata Storage ServerのH/Wが設置され、8,000万件のデータに対する全件検索を実施するSQL命令を実行。従来のストレージでは21秒かかる検索が、HP Oracle Exadata Storage Serverだと2秒ほどで完了し、転送されるデータ容量もかなり少ない。これがHP Oracle Exadata Storage Serverの優れた性能だ。HP Oracle Exadata Storage Serverをベースに構築したシステムHP Oracle Database Machineや、サイズと構成数を半分に抑えたHP Oracle Database Machine Half Rackも紹介された。
ハードウェア業界の進出は…
Oracleはソフトウェアベンダだ。HP Oracle Exadata Storage ServerやHP Oracle Database Machineは同社が取り組む初のH/Wプロダクトであり、性能をさらに引き上げようとした結果生まれたプロダクトだとされている。こうなってくると気になるのは、今後ほかにもアプライアンスを手がけてくるのか、ということだ。
Oracleプロダクトが問題なく動作するH/Wを用意してあらかじめインストールされた状態で販売してほしいという声はこれまでもあるようだ。Andy Mendelsohn氏はそうした計画がどうかについては語らなかったが、顧客が望むのであれば可能性はあるといった説明をおこなった。
さらに数日前、OracleはSun Microsystemsの買収を発表したばかり。Sunの買収によってH/W資産を手に入れることになれば、当然次のステップとしてさらなるアプライアンスの提供という話も見えてくる。