朝日新聞社や講談社など5社は22日、朝日新聞の時事キーワードや講談社の日本人名大辞典など、約43万語の用語解説を検索・閲覧できるサイト『kotobank(コトバンク)』を23日に開設すると発表した。検索連動型広告による収益化を目指すとしている。

23日に開設される用語解説サイト『kotobank(コトバンク)』

「kotobank」に辞典などの用語解説コンテンツを提供するのは、朝日新聞社のほか、朝日新聞出版、講談社、小学館の4社。検索エンジンなどのプラットフォームをECナビが提供する。検索・閲覧などのサービスを全て無料で提供する。

朝日新聞社は、「時事キーワード(7,200語)」や「ASCII.jpデジタル用語辞典(1万500語)」、「百科事典マイペディア(6万5,973語)」にその他企業提供の35辞書などを合わせた、約11万2,000語を提供。朝日新聞出版は「知恵蔵2009(7,651語)」など2万語、講談社は「デジタル版日本人名大辞典+Plus」の7万4,000語、小学館は「デジタル大辞泉(約22万5,000語)」を提供。これにより、約43万語の用語解説が検索・閲覧できるようになっている。

「kotobank」には、朝日新聞出版、講談社、小学館4社のコンテンツが提供されている

kotobankは、朝日新聞社が発行していた「知恵蔵」が2007年版を最後に休刊したのに対し、そのコンテンツを生かそうとECナビが朝日新聞社に相談を持ちかけたのがきっかけ。2008年6月から「みんなの知恵蔵」のサービスが提供開始されたが、コンテンツの充実を求めるユーザーの声が多くあったことから、講談社や小学館にも提携を打診。その結果、各社の用語解説を共通のプラットフォームを通じて閲覧できるkotobankが開設されるに至った。

ビジネスモデルとしては、キーワード広告(検索連動型広告)による広告収入を収益源とし、広告売上を各社で分配。2009年度の売上目標として、1億円弱を見込んでいる。

22日に東京都内で開かれたサービス提供の記者会見では、朝日新聞社デジタルメディア本部長の大西弘美氏が、「kotobankの特徴は、共通のプラットフォームで数多くのコンテンツを提供できる点。各メディアの枠を超えた信頼性の高い用語解説を提供できる。新聞・出版など活字メディアは厳しい状況にあるが、kotobankがメディア業界全体の新風になることを期待している」とあいさつ。「スタート時は43万語だが、3年後には200万語を提供できるよう、今回参加していない企業などにもコンテンツ提供を呼びかけていきたい」と述べた。

2008年に朝日新聞社から分離・独立して知恵蔵の事業を引き継いだ朝日新聞出版の開発統括の篠崎充氏は、「知恵蔵を休刊した時、コンテンツ制作をやめるべきかどうか迷ったが、作り続けることを選んだ結果、今回のkotobank開設に至り大変喜ばしい。他の出版社も参加してもらい、どんどん拡大することを期待している」と述べた。

講談社デジタル事業局局長の吉羽治氏は、「当社がkotobankに提供する日本人名大辞典は、3万2,000円と価格が高く、エンドユーザーの手元に届きにくい。Webで公開することで、日常的に使ってもらえることを期待している」と発言。「新聞、出版という紙メディアによる"紙媒体連合"が実現したことは大きな意義がある」とその意義を強調した。

左から、講談社デジタル事業局局長の吉羽治氏、ECナビ代表取締役CEOの宇佐美進典氏、朝日新聞社デジタルメディア本部長の大西弘美氏、朝日新聞出版開発統括の篠崎充氏、小学館マーケティング局ネット・メディア・センター ゼネラルメネージャーの小室登志和氏

その後の質疑応答では、「3万円以上もする辞典などのコンテンツを無料で提供してビジネスとして成り立つのか」との質問があった。これに対し、講談社の吉羽氏は、「Webはコンテンツの提供の仕方のone of them。なかなかエンドユーザーに提供しにくいコンテンツはWebで、紙として出版できるものは紙で提供するなど、よりユーザーに提供しやすい媒体を選んでいくことがいいと考えている」と発言。

「Wikipedaを意識しているのか」との質問には、朝日新聞社の担当者が「Wikipediaほどの速度での更新は難しいが、従来の紙媒体での年度ごとの更新より早い更新速度で、信頼性の高い用語解説を提供していきたい」と述べた。