DNGについて淡々と語るトーマス・ノール氏

Photoshopの生みの親で、現在はアドビ製品のICCプロファイルに準拠したカラーマネージメントシステムの設計を行う、米Adobeのトーマス・ノール氏が来日。同社が推し進めるRAWフォーマット「DNG」について、アップデート情報も含めたプレゼンテーションを行った。

DNGとは「Digital Negative」の略称でRAWデータの標準アーカイブ形式として開発された統一規格フォーマット。今回、ノール氏が語ったのは、近々リリース予定のDNG 1.3についての概要であったが、プレゼンテーションは、昨年リリースされた現行のDNG 1.2の説明からスタートした。

DNG 1.2の解説

レンダリングの際に「温かい色合い」を作り出す、RAWデータの新たなデフォルトプロファイルとして開発された「Adobe Standardプロファイル」の作成、キヤノンやニコンなどカメラメーカーの特徴ある「色」にマッチする「マッチングプロファイル」の作成、自分自身でカメラプロファイルを構築でき、既存の画像データのプロファイルを編集することもできるフリーソフト「DNGプロファイルエディター」など、DNG1.2を新たなDNGのカラーモデルという点から紹介。

「温かい色合い」を作り出すAdobe Standardプロファイル。左は、プロファイルを用いる前のトマト画像、右はプロファイルを用いた画像 (C) 2009 Adobe Systems incorporated. All rights reserved

その他、MD5のダイジェストがRAWデータにオプションで付随することによって、画像が破損しているときはユーザーに警告を発する機能についてや、sRGB、AdobeRGB、ProPhotoRGBのカラースペースの選択が可能で、Jpegの圧縮/非圧縮も選べるという組み込み型のプレビューになったことによって、多様なレンダリングが可能になったことを語った。

DNG1.3の特徴と新機能

Camera Raw 5.4、Lightroom 2.4など、次回のドットリリ―スで盛り込まれる予定のDNGバージョン1.3。Opcodeを用いてオペレーションやパラメーターをリスト化し、複雑な処理をカメラから取り除くことができるようになるなど、多くの効果が追加される、とのこと。

その他、Warp PerspectiveというOpcodeによって樽型のひずみ、糸巻き型のひずみ、陣笠のひずみが生じても、レンズ補正をかけることができ、Fix Bad Pixels ConstantというOpcodeでは、欠陥したピクセルを修正することが可能になると語った。

RAWデータの統一規格に向けて

一連の解説の最後で、ノール氏はDNGの現状を踏まえて次のように語った。「カメラメーカーから、標準化されたRAWフォーマットにメリットが見いだせないという意見があるのは事実です」

確かに、メーカー側からすると、各社特有の「色合い」といった画像の演出が標準化されてしまうことに魅力はなかなか見いだせない。しかし、ユーザーの立場から考えれば、100以上も存在する異なるRAWフォーマットでは対応しにくい現実があるのもまた事実だ。

「新しくカメラが出るたびに、RAWデータ処理ソフトのアップデートをしなければならないという現実は、RAWが標準化されていないことに起因していて、人的資源のムダなのではないかと思います」

具体的な日程については触れられなかったものの、DNG1.3は近い将来に発表されることになるだろう。