富士通とシスコシステムズは4月16日、戦略的提携をユニファイド コミュニケーション(UC)分野に拡大したことを発表した。両社は同提携に基づき、日本市場に向けソリューションの開発、サービスの提供、プロモーションを共同で実施していく。

富士通 経営執行役常務 川妻庸男氏

富士通の経営執行役常務である川妻庸男氏は、「モバイルネットワーク先進国である日本にとって、いつでもどこでもコミュニケーションがとれるユニファイドコミュニケーションは重要な技術。ある調査ではユニファイドコミュニケーションの市場規模は2,500億から3,000億円という結果が出ている。しかし現在、日本では市場が形成されていないので、当社が先駆者となって切り開いていきたい」と、UC分野参入の意気込みを力強く語った。

富士通がパートナーとして選んだのが、UC市場で世界的なシェアを持つシスコだ。シスコのコミュニケーション分野における技術力・開発力とグローバルでのビジネス経験に、富士通のICTにおける実績・ノウハウとIT製品全般にわたる開発力を融合することで、「国内のUC市場でトップを獲得し、2012年度にはシェア40%を目指す」という。「シスコのネットワーク機器を導入している企業は多いが、社内のシステムとうまく結び付いていない。今回の提携により、当社が橋渡しとなってシスコの"道具"と企業システムをつないで、ユニファイドコミュニケーションを構築していきたい」(川妻氏)

今回の提携の下、「富士通によるUC対応製品の開発」、「UC市場開拓に向けた両社の体制強化」、「グローバル展開」といった取り組みが行われる。

富士通は同日、UC対応製品として、シスコのシスコ ユニファイド コミュニケーション システムの呼処理コンポーネント「Cisco Unified Communications Manager」(以下、Unified CM)とモバイル端末を接続するためのアクセスユニット「VJ-110」シリーズの販売を開始した。このほか、5月中旬にはUnified CMと連携させるミドルウェア、7月以降には富士通のグループウェア「TeamWARE」、各種業務アプリケーションとUnified CMの連携を行うソフトウェアを順次、提供する予定。

また、両社の開発部門は直接連携を図り、ロードマップを共有するほか、富士通は今年度末までに、UC向けのテクニカルサポート要員を300名育成する。

富士通は、「2009年上期」、「2009年下期」、「2010年以降」という3つのステップに従って、UCに取り組んでいく。

富士通のユニファイドコミュニケーション市場への取り組みの流れ

シスコシステムズ 社長兼CEO エザード・オーバービ-ク氏

「なぜ、ユニファイドコミュニケーション分野の提携先として富士通を選択したのか」という記者の質問に対し、シスコシステムズの社長兼CEOであるエザード・オーバービ-ク氏は、「当社と富士通は以前から提携を行っており、キャリアクラスのルータ・スイッチの共同開発で成功するなど、信頼関係が構築されている。加えて、富士通は日本市場においてソリューションやサービスの開発・提供という点で実績があり、富士通のノウハウと当社の技術力を融合することで、ユニファイドコミュニケーションに関する強力なソリューションとサービスを作り上げていけるから」と答えた。

富士通はPBX製品の販売を行っており、既存の顧客の対応を踏まえ、通信機器のラインアップはPBXとUC関連製品の2系統を販売していくことになる。PBX製品を利用している顧客がUCシステムにリプレースするとPBX事業の収益は減ることになるが、川妻氏は「LANの構築やアプリケーションの連携に関する作業など、会社全体として見れば収益が上がることになる」として、UCが同社の発展に貢献する商品であることをアピールした。

左から、米Cisco Systems UCマーケット デベロップメント バイスプレジデント リック・マッコーネル氏、シスコシステムズ 社長兼CEO エザード・オーバービ-ク氏、富士通 経営執行役常務 川妻庸男氏、富士通 ネットワークサービス事業部 プロダクト企画事業部 事業部長 鍋田政志氏