調査委会社の米IDCは4月15日(現地時間)、2009年第1四半期の世界のPC市場調査結果を発表した。金融危機が広がりつつあるなか、ネットブックのようなミニノートPC製品が市場をリードするとともに価格下落圧力となっており、出荷台数についても前年同期比7.1%の下落となった。IDCによれば、当初の予測幅である-8.2%の水準よりは幾分かよかったと述べている。

ベンダー別でみるとHewlett-Packard (HP)が1位のポジションを堅持しており、世界全体で2.9%、米国にいたっては12.2%の前年同期比ベースで大幅な成長を達成している。その一方で2位のDellは世界規模で16%超の大幅ダウンとなり、シェアでもHPに大きく水を空けられる形となった。もともとHPは世界全体で強く、Dellは全体でこそHPの後塵を拝しているものの、地元である米国でのシェアが非常に高いのが特徴だったが、今回の結果で米国内でのシェアもHPにトップの座を譲ることとなった。デスクトップPCでの売上不調だけでなく、他社がラインナップを強化していたノートPC市場で苦戦した結果だという。

今回大きく躍進したのはAcerと東芝だ。Acerは地盤とするアジアや欧州での業績こそ大きく伸びなかったものの、Gatewayならびに傘下のeMachinesを獲得したことで米国での成長率が13.4%とHPのそれを上回っていた。また話題のネットブック製品で有利な戦いを進めていたことも業績に貢献した。PC市場のノートPCへのシフトというトレンドを最大限に活用したのが東芝で、このカテゴリを主軸とする同社では世界市場での成長率が11.6%、米国内での成長率が18.7%と大幅な躍進を見せた。台数シェアでいえば、米国内で4位のAppleにあと一歩のところで追いつくレベルにまで到達している。

Dell同様に厳しい戦いを強いられているのがLenovoだ。同社は今年2月にCEO交替を発表しており、PC戦略を従来の広域展開から本拠地である中国市場に注力することを表明している。今回のデータは、同社が戦略見直しの岐路に立っていることを示す一例となりそうだ。

IDCではPC市場の落ち込み幅が予想より少なく、その理由がミニノートPCの登場と価格下落が金融危機のショックを和らげたことにあるとしている。同社はこうした傾向が今後数四半期は続き、年末まで回復は難しいと予測する。

だが、まだ復活の道のりは厳しいということが、いくつかの兆候で見て取れる。例えば14日に第1四半期決算を発表した米Intelによれば、ミニノートPCの主力部品である同社Atomプロセッサの売上が前期比で26%低下したとコメントしている。平均販売価格(ASP)は変化していないため、顧客ユーザーであるメーカーの在庫調整で出荷そのものが鈍っていることがわかる。これは来四半期以降のメーカー決算やPC市場に段階的に表れることとなり、結果として今後さらに調査結果が悪化する懸念となって返ってくる。

2009年第1四半期の世界のPC出荷台数メーカー別内訳 (単位は1000)

メーカー名 09Q1出荷台数 09Q1シェア 08Q1出荷台数 08Q1シェア 成長率
HP 13001 20.5% 12634 18.5% 2.9%
Dell 8651 13.6% 10383 15.2% -16.7%
Acer 7333 11.6% 6863 10.1% 6.8%
Lenovo 4427 7.0% 4811 7.0% -8.0%
東芝 3447 5.4% 3090 4.5% 11.6%
その他 26601 41.9% 30494 44.7% -12.8%
合計 63460 100.0% 68274 100.0% -7.1%

2009年第1四半期の米国内のPC出荷台数メーカー別内訳 (単位は1000)

メーカー名 09Q1出荷台数 09Q1シェア 08Q1出荷台数 08Q1シェア 成長率
HP 4130 27.6% 3682 23.8% 12.2%
Dell 3930 26.3% 4689 30.4% -16.2%
Acer 1576 10.5% 1389 9.0% 13.4%
Apple 1130 7.6% 1144 7.4% -1.2%
東芝 987 6.6% 832 5.4% 18.7%
その他 3212 21.5% 3706 24.0% -13.3%
合計 14965 100.0% 15441 100.0% -3.1%