EMCジャパンは4月15日、ストレージシステムの容量を大幅に拡張する新アーキテクチャ「EMC Virtual Matrix」およびこのアーキテクチャを採用したストレージシステム「EMC Symmetrix V-Max」を同時に発表した。物理サーバの設置スペースや消費電力コストに悩む企業が後を絶たない中、「リソースを提供する側も利用する側も、オンデマンドで柔軟にスケールアウトできるデータセンター」(EMCジャパン 執行役員 マーケティング本部長 高橋俊之氏)が求めらる傾向にある。EMC Virtual Matrixはストレージ間だけでなく、仮想データセンター間の垣根を超えた接続を可能にし、プライベートクラウドによる"巨大な単一ストレージ"環境を提供するアーキテクチャ。「情報インフラのあるべき姿を実現した、我々の歴史の中でもマイルストーンとなる製品」(高橋氏)と同社は自信を見せる。
EMC Virtual Matrixは、システムの容量を数百ペタバイト、IOPSを数千万まで拡張できるアーキテクチャで、「2007年1月に他社に先駆けて発表したエンタープライズSSDと並ぶ画期的な技術」(EMCジャパン マーケティング本部 プロダクト・マーケティング部 部長 中野逸子氏)だ。このアーキテクチャでもって複数の仮想データセンターを接続することにより、数十万台の仮想サーバを単一ストレージインフラでサポートが可能になる。
そして同アーキテクチャを採用した最初の製品が「EMC Symmetrix V-Max」だ。Virtual Matrixインタフェースを含むダイレクタを2個接続したストレージエンジン「Symmetrix V-Maxエンジン」を最大8個相互接続できる。1個のエンジンには、ストレージプロセッサにIntel Xeon クアッドコアCPU(2.3GHz)×4、最大128GBのグローバルメモリ、フラッシュドライブ/ファイバチャネル/SATAドライブを混在できる最大16ポートのディスクチャネル、同じく最大16ポートのファイバチャネル/FICON/ギガビットEthernet/iSCSI接続をサポートするI/Oポートが搭載されている。
現時点では、Symmetrix V-Maxの最大搭載エンジン数は8個(16ダイレクタ)、1ダイレクタのインターコネクトは2本だが、「技術的には拡張可能。現在は顧客の要望や需要を考慮して、エンジンの最大搭載数を8個、インターコネクト2本にしているが、ニーズがあれば増やすことはできる」(中野氏)という。エンジン8個を搭載した場合、既存のSymmetrix DMX-4と比べて「2倍の接続性、3倍の実行容量、消費電力20パーセント削減」(同社)を実現できる。価格はエンジンの搭載数に依り、最小構成(エンジン1個)で2,980万円(保守別)からとなっている。
Symmetrix V-Maxの特筆すべき点は、「小さくはじめて必要に応じて拡張できる。動的にエンジンを追加することで"巨大な仮想単一ストレージ"を構築でき、管理性も高まる。ばらばらとサーバをもつよりはるかに効率的」と中野氏が言うとおり、データセンターをまたいだ運用をも可能にするスケールアウトの柔軟性だろう。「16年の実績をもつSymmetrixシリーズの高い信頼性と拡張性を踏襲」(中野氏)したうえで、既存のストレージの統合度を高めるべく、同社のあらゆる技術を新アーキテクチャに投下したという。また同社はVirtual Matrixアーキテクチャに対応した自動化テクノロジとして「FAST(Fully Automated Storage Tiering: 自動化階層機能)」を同時に発表している。EMCが提唱するILM(情報ライフサイクルマネジメント)に沿い、「アクセス頻度が低いデータはSATAに、高パフォーマンスが求められるデータはSSDに配置する、といった階層化も自動で行う」(中野氏)機能で、発売されるのは今年後半の予定だ。「要件は変化するもの。データを動的かつ自動で最適なディスクドライブ上で管理できれば、それが消費電力の低減や運用コストの削減、ROIの向上につながっていく」(中野氏)。
金融不況によるITコスト削減が叫ばれる中、「サーバの仮想化はこの経済状況下でも期待できる分野」だと中野氏は言う。コスト削減やハードウェア設置スペースの縮小などにつながるだけでなく、ディザスタリカバリ(災害対策)の面からも期待が高い。クラウドの台頭でデータセンターの運用のあり方が大きく変わりつつある現在、Virtual Matrixアーキテクチャのような仮想化データセンターのインフラ基盤が各社から登場してくると見られている。EMCはこの分野では"一番手"の優位性を維持できるのか、今後の同アーキテクチャの展開が注目される。