4月7日、先月末サービスが開始された「J-SaaS」をテーマに、SaaS/ASP事業者のサービス連携を推進する団体SOABEX研究会(SOABEX Consortium)は定例会を開催し、経済産業省 情報処理振興課 課長補佐 安田篤氏の基調講演とパネルディスカッションを行った。

J-SaaSは、経済産業省が中心になって進めている、中小企業向けのSaaSだ。3月31日より運用を開始しており、J-SaaSのWebページより、サービスの申し込みが行える。4月8日現在、財務会計、経理、給与計算、税務申告、グループウェア、経営分析、販売管理など11カテゴリがあり、26のサービスが展開されている。今後はさらにカテゴリやサービスが追加され、拡張されていく予定だ。

J-SaaSの概要

基盤システムでは、自社のデータセンターでサービスを提供するパターンと、富士通が運営するデータデータセンターで提供するパターンの2つがあり、現在はほぼ半々だという。どちらの基盤においても、共通のUIからログインし、複数のサービスを利用しても、シングルサインオンで利用でき、請求も一括で行われるしくみになっている。

J-SaaSの基盤システム

J-SaaSで満たすべきSLA

このしくみに対しては、国が資金的支援を行っており、具体的には富士通が構築したデータセンターの構築費、ベンダーに対するアプリケーションの移植費、利用者に対するプロモーションや研修に対し国費が利用されている。

経済産業省 情報処理振興課 課長補佐 安田篤氏

安田氏は、中小企業のITについて、「ステージ1:情報システムの導入」「ステージ2:情報システムを部門内で活用」「ステージ3:情報システムを部門を越えて企業内で活用」「ステージ4:情報システムを取引先や顧客など企業を越えて活用」という4段階に分けた場合、日本はステージ1で留まっている割合が高く、ステージ3以上については米国の54%に対し日本は26%と、日本のIT活用が遅れているという現状を説明。とくに、従業員21名以上の企業とそれ未満の企業におけるIT格差があり、J-SaaSでこれらの課題を解決したいという目標を語った。

「企業のIT活用に関する現状調査」にみる日・米・韓の現状(出典:経済産業省)

また、従業員数が少ないほどITを経営の重要課題の1つと位置づけている企業の割合が少なくなる傾向があり、一方ITを経営の重要課題の1つと位置づけている企業ほど売上高や利益率が上昇傾向にあるというデータもあり、安田氏はこのあたりを中小企業にIT化を進めてもらうための説得材料にしたい考えを明らかにした。

安田は、中小企業のIT化が進まない要因として「初期投資額が高い」「高度なITスキルが必要」「セキュリティ対策やデータ管理まで手が回らない」の3点を挙げ、この課題を解決する手段としてSaaSが中小企業のIT化のカギになると述べ、J-SaaSを経産省が推進する理由を説明した。

3月31日の運用スタートからの1週間の実績では、アクセスは10万で、登録は300社、実際利用しているユーザーは50社ほどで、安田氏は、ユーザーはまだ様子見の段階であると語った。