ヤフーとUSENは7日、合同記者会見を開き、ヤフーが運営する動画サービス「Yahoo!動画」と、USENの子会社GyaOが運営する動画配信サービス「GyaO」を2009年秋から統合することで合意したと発表した。「システム統合でコストを削減すると同時に、広告配信や課金システムなど、多様なビジネスチャンスを創造する」(ヤフーの井上雅博社長)としている。

会見では、ヤフーの井上雅博社長(左)とUSENの宇野康秀社長(右)が記者団を前に握手した

動画投稿サイトが台頭、Yahoo!動画・GyaOとも収益化に至らず

ヤフーでは、「Yahoo!動画」を初めとして、10以上の映像配信サービスを提供。利用者数は月間約1,100万人を数える。

一方「GyaO」は、USENの100%子会社であるGyaOが運営。シネマ&ドラマ、音楽、アニメなど12分野のコンテンツを無料で配信し、約2,200万人がユーザー登録を行っている(2009年3月末時点)。

だが、動画配信サービスにおいては、「ニコニコ動画(ββ)」や「YouTube」などCGM型の動画投稿サイトが台頭。Yahoo!動画・GyaOの両サービスとも、収益化には至っていない。

統合による規模のメリットとコスト削減効果を生かし「日本最大級の映像配信プラットフォームになる」(ヤフーの井上雅博社長)としている

GyaO分社化の2008年10月、USEN側からヤフーに提携を打診

こうした状況下、USENがGyaOを分社化した月に当たる2008年10月ごろ、USEN側からヤフーに提携を打診。両社で検討の結果、GyaOの株式の51%をヤフーに譲渡する資本業務提携を結ぶことで合意。Yahoo!動画とGyaOの両サービスを2009年秋に統合することとなった。

両サービスの統合では、当初は両サービスのブランドを並存させながら、双方のシステムの長所を生かす形で徐々にシステムを統合。1年後を目途に新システムを稼動させ、コスト削減を図る。

コンテンツのシステムだけでなく、広告配信や課金システムも統合。システムはオープン化する方向で、「有料・無料を問わず、動画を使ったビジネスを行おうというコンテンツ・ホルダーやサイト運営者が使いやすいものとし、多様なビジネスチャンスを創造する」(井上社長)としている。

7日開かれたヤフーとUSENの合同記者会見では、ヤフーの井上雅博社長とUSENの宇野康秀社長が出席。井上氏は、映像配信サービスの利用者数で動画投稿サイトが急成長しているとし、「動画投稿サイトには違法コンテンツが多く散見され、コンテンツを制作する側が継続的にサービスが提供することができなくなる可能性がある」と指摘。

映像配信サービスの利用者数で動画投稿サイトが急成長している現状が説明された

「我々はコンテンツの権利者に対価をきちんと払った上でのスキームを目指す」と今回のサービス統合の意義を強調し、「きちんとした映像配信サービスを作っていけば、必ずNo.1のサービスになる」と抱負を述べた。

USENの宇野氏は、「GyaOは世界に先駆けて無料で動画を配信するという文化と時代の流れをつくってきた。著作権を適正に処理して配信しているYahoo!動画とGyaOのコンテンツを共有化することで、視聴者や広告主、コンテンツ・ホルダーに使い勝手のよいサービスになると思い提携を決断した」と話した。

統合後のブランドについてヤフーの井上氏は、「GyaOのブランドが多くの利用者に支持されており、大切にしたほうがいいと考えているが、新会社の経営陣がどう考えるかだ」と説明。

また、6日発表されたテレビ向けインターネットサービス「テレビ版Yahoo! JAPAN」のような取り組みを、統合後も積極的に行っていく方針も明らかにした。

「GyaO赤字の要因」について宇野社長が説明

会見後の質疑応答では、「GyaOがずっと赤字だった要因は?」との厳しい質問も。これに対しUSENの宇野氏は、「理由は一つではない。広告商品としての十分な完成度に至っていなかったことや、クライアントにその価値を十分に分かってもらえなかったからではないか」と回答。

さらに、「GyaOではコンテンツ・ホルダーと正規の契約を結びきちんとした対価を払っているが、サービス開始当初では想定しえなかった(動画投稿サイトなどの)サイトが出てきたこともあり、そうした環境への対応が未整備だったことも要因の一つ」と述べた。

テレビ向け動画配信サービス「GyaO NEXT(ギャオネクスト)」については、「GyaOとは別のサービスであり、引き続きユーザーの拡大に努めていく」と存続させる方針を示した。

また、今回の統合について、「ヤフーはニコニコ動画と提携していたはずだが、これからの関係はどうなるのか」との質問もあった。

これに対し井上氏は、「存在そのものがまずいと思っているわけではないが、テレビ番組を録画したものがそのまま投稿されてしまうなど、コンテンツが次々と作られていかなくなるのが一番の懸念」と強調。

その上で、「きちんと権利処理したコンテンツをきれいな画質で配信することで、視聴者が違法なコンテンツを見なくなることを期待している」と述べ、今後の映像配信サービスの在り方について言及、統合後の新サービスへの期待を示していた。