Pentium Pro以来の躍進を狙う
米Intelの日本法人であるインテルは4月6日、Intelの上級副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパット・ゲルシンガー氏が来日、3月30日(現地時間)に発表した「Nehalem-EP(開発コードネーム)」こと「Intel Xeonプロセッサ 5500番台」のアピールを行った。
左が「Pentium Pro」のチップ、中央が「Xeon 5500番台(Nehalem-EP)」の300mmウェハ、右が「Xeon 5500番台」のチップ |
「Xeon 5500番台」のヒートスプレッダを外したところ |
同5500番台は、同社のNehalem世代の新アーキテクチャに基づき開発されたサーバ/ワークステーション向けCPUであり、アーキテクチャの刷新により処理能力の向上、と消費電力の抑制を両立することに成功している。
インテルの代表取締役である吉田和正氏は冒頭、「2008年にCore i7で起きたデスクトップの革新をサーバ/ワークステーションにもたらすもの」とし、サーバ/ワークステーション分野で生じている課題に対し、「高まる性能向上への期待と消費電力への答え、そして仮想化への対応といった高い付加価値を提供することで、市場の活性化を図っていきたい」とより高まった性能をアピールしていくことを強調した。
続いて登壇したゲルシンガー氏は、「Pentium Pro」を取り出し、IAサーバの歴史を振り返り、「1995年にIntelがPentium Proを投入したことで、SHV(標準量産型:Standard High Volume)サーバが確立された」とし、「そのIA量産型サーバは今では年間1,000万台規模の出荷台数を達成するまでに成長を遂げた」とPentium Proで築いたSHVサーバの役割が大きかったことを強調した。
また、今後はWebの時代から150億台とも言われる組込機器も含めた機器がネットワークへと接続する「クラウド・アーキテクチャとも呼べる時代が来ることが見込まれており、そうした時代の核となるのがXeon 5500番台である」(同)とし、「Xeon 5500番台はPentium Pro以来、Intelにとって最も大きな躍進をもたらすもの」(同)とその意義を語った。
また、Xeon 5500番台はインターネット分野だけに革新をもたらすわけではないとし、HPCの分野でも高い効率を引き出せるとし、NASAがXeon 5500番台を用いて1PFLOPSを実現するシステムを導入することや、製造業分野でのシミュレーションなどの活用による製品開発期間の58日間短縮、試作コストの48%削減などもアピールした。
全体パフォーマンスが向上
Nehalem-EPはアーキテクチャ的には、45nmのHigh-Kプロセスを採用し、クアッドコアに対応する。また、各種の低消費電力機能や高性能化機能を搭載しており、「コアもすばらしいが非コア部分の設計変更に目を見張るものがある」(同)とコア技術だけではなく全体のパフォーマンスが向上していることを指摘し、「開発はオレゴンチームが担当した。まさにやってくれた、という感じだ」(同)との感想を述べた。
その非コア部分はというと、内蔵メモリコントローラはDDR3のUnbuffered/Registered DIMMに対応。CPUとチップセットは「QuickPath Interconnect(QPI)」を用いることによるバンド幅の拡大によるスループットの向上が図られているほか、状況に応じてプロセッサの動作周波数を変化させる「Turbo Boost Technology」や、「Hyper-Threading Technology」、仮想化技術である「Intel Virtualization Technology(VT)」などが導入されている。
こうした技術を導入したことにより、「Xeon 5500番台は"処理性能""消費電力""仮想化"といったすべての要求に柔軟に対応することができるプラットフォームであり、あらゆるユーザーのアプリケーションや環境に適応することが可能となる」(同)とする。
システムコストに関しても、2005年の1コアXeon搭載サーバ184台と比較して、性能重視の更新として同数のXeon 5500番台サーバに変更した場合、最大9倍のパフォーマンス、および年間電力コスト18%削減できるほか、同様の性能を実現する効率重視の更新をした場合、21台のサーバで済み、結果として年間電力コストは92%削減され、投資費用は8カ月で回収可能という。「ワットあたりの処理性能はNehalem-EPの方が従来の各種Xeonと比べ圧倒的に高く、ROIについては日本の方がコスト高なので、回収期間は短くなるはず」(同)との見通しを示した。
Nehalem-EXは早ければ夏頃登場
Intelが従来標榜してきたTick-Tock戦略は今回も踏襲される。まず同じ45nmプロセスで23億トランジスタを搭載し最大8コアまで対応可能な「Nehalem-EX(Expandable)」が2009年後半に量産を開始。「早ければ夏頃には登場するかもしれない」(同)という。2009年末には今回のアーキテクチャを32nmプロセスに移行した「Westmere(開発コードネーム)」も投入予定で、Westmere-EPとしては6コアに対応するほか、Nehalem-EXの後継となるWestmere-EXなどの投入も行っていく計画としている。