ノンリアルタイムコミュニケーションツール2種類、リアルタイムコミュニケーションツール2種類の4サービスと、それを統合した「Microsoft Business Productivity Online Suite」(BPOS)が提供される |
マイクロソフトは6日、企業向けソフトウェア製品をオンラインサービスとして提供する「ソフトウェア+サービス(S+S)」として「Microsoft Online Service」を4月末までに提供すると発表した。第1弾として「Microsoft Exchange Online」「Microsoft Office SharePoint Online」などを含む「Microsoft Business Productivity Online Suite」(BPOS)が提供され、1ユーザーあたり月額1,567円で利用できる。
従来、Exchange、SharePointといったソフトウェア製品は、ユーザー側でサーバなどを用意して環境を構築する必要があったが、Microsoft Online Serviceではこれらをすべてマイクロソフトが用意し、ユーザー側は契約を結ぶだけで、特別な作業を必要とせずに導入できる。料金は月額料金だけなので初期費用もかからず、コスト削減ができるというのが特徴だ。
すでに米国では昨年11月からサービスを開始し、これまでにGlaxoSmithKline(グラクソ・スミスクライン)やIngersoll Rand、Coca-Cola Enterprisesなどの企業が導入。GlaxoやCoca-Cola、Nokiaといった企業は、数万単位のユーザーをこのBPOSに移行させることを決定しているという。国内では3月10日から無償で試験サービスを提供していた。
正式サービス移行に伴い、サービス料金が明らかにされており、Exchange Onlineは1ユーザーあたり月額1,044円(税別、以下同)、SharePoint Onlineは同757円、Office Communications Onlineは同261円、Office Live Meetingは同800円で提供。これらをすべて含めたBPOSは同1,567円で提供する。
また、Exchange OnlineとSharePoint Onlineには、Webブラウザからのアクセスに限定し、メールボックスの容量を制限するなどした「Deskless Worker」も提供し、それぞれ同209円、2つを統合した「Deskless Worker Suite」は同313円で提供する。
BPOSは、既存のソフトウェア版ExchangeやSharePoint環境と混在することも可能で、たとえばすでに導入済みの本社はソフトウェア、支店や海外事務所はオンラインで、といった使い分けができる。さらにそのうち、よく外出している営業マンにはDeskless Worker版を使う、といった柔軟な利用方法が可能だ。
利用ユーザー数に応じて割引するボリュームディスカウントも用意されており、250ユーザー以上から割引が適用される。15,000ユーザー以上であれば約24%の割引が受けられ、BPOSは月額料金1,191円で利用できるようになる。また、すでにサーバを導入してCAL(クライアントアクセスライセンス)を持つ企業であれば、それをオンライン版のユーザーとして充当でき、249ユーザーまではBPOSが月額1,269円で利用できるなどと割引が行われる。250ユーザー以上の割引もあり、15,000ユーザー以上であれば約24%の割引となる。
6月末までのキャンペーンも行われ、CALがないユーザーでも、CALを持つユーザーと同じ価格で利用できる。CALを持つユーザーも10%の割引になるので、BPOSが月額1,143円で利用できる。15,000ユーザー以上ならBPOSが月額862円まで割り引かれる。
マイクロソフトは現在、従来のソフトウェアビジネスに加え、クラウドコンピューティングにも注力しており、この2つを組み合わせたS+Sを拡充している。クラウド向けプラットフォーム「Azure」の発表、次期Microsoft Office製品でのオンライン版の提供などに続き、今回はエンタープライズ製品のオンライン版を提供することで、ユーザーの選択肢を増やしている。これを米Microsoftのマイクロソフトビジネス部門担当プレジデント、スティーブン・エロップ氏は、「選択肢の力」と話し、同社のソフトウェア製品をオンラインで利用できることが「まさにマジック」だと力説する。
オンラインサービスのメリットについてエロップ氏は、まずコスト削減を挙げる。同サービスに移行を決めた企業が計算したところ、30%のコスト削減が実現できるとのことで、これらのコストを別のビジネスに振り分けられる。2点目はIT管理者がメールなどの「重要だが戦略的ではない」(エロップ氏)作業に煩わされず、「もっと戦略的なアプリケーションに専念できる」(同)。
同社は従来からパートナーとのエコシステムを重視しており、今回のサービスでもエロップ氏はパートナー企業との関係を強調。日本国内だけでも、30社以上が認定パートナープログラムに参加しているという。
「(IT業界が)世代交代を迎えようとしている」とエロップ氏。PCの普及期、インターネットの本格的な展開と行ったように、オンラインサービスの提供がこれまでのIT業界の世代交代と同じような状況だとエロップ氏は強調する。
マイクロソフト執行役常務ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン氏は、従来、メールシステムはPOP3で十分、社内運用する人材がいないなどの理由でExchangeなどの製品を導入してこなかった企業に対して訴求できるサービスであるとともに、大企業でも生産性の向上が図れると指摘。
料金設定も、従来は1ユーザーあたり月額1,200円程度のコストがかかるところを、それ以下の料金設定とし、コストメリットの高さを訴える。佐分利氏は、「日本ではITがコストセンターと見られているが、プロフィットセンターに近い位置づけにしたい」と意気込んでいる。