米サンフランシスコでWeb 2.0 Expoが始まった。カンファレンス初日となる4月1日(現地時間)の夕方にO'Reilly Media創設者Tim O'Reilly氏による基調講演が行われた。
同氏が提唱したWeb "2.0"はバージョン番号を示しているのではない。ドットコム・バブルがはじけてWebビジネスが衰退するという悲観的な見方が蔓延した中、いくつかの企業はWebをプラットフォームと見なし、集合知の価値を引き出して逆に困難な状況を成長のチャンスとした。そんなWeb企業の第2章を示すものだった。今日、世界規模で経済状況が悪化している。今やWeb 2.0という言葉に新しさはないものの、「Web 2.0の本当の意味を実感できる時期を迎えている」とO'Reilly氏。Web 2.0を経てきたWeb産業だからこそ、今日の経済状況を変えるカギとなり得るというのが、この日の講演のテーマだった。
講演の直前に、O'Reilly氏の初孫が誕生したそうだ。だからというわけではないだろうが、Webを子供の成長に見立てて説明した。
生まれてからしばらく、子供は身の回りのものが何であるかを認識する作業を繰り返す。データ収集である。そのうち成長するにしたがって、ものを使って遊ぶことを覚え、さらに遊びを生産的な作業に発展させる。
Webも同様だ。例えば検索の歴史にを振り返ると、1994年にBrian Pinkerton氏が動作させたWebCrawlerは5,700ホストをクロールするシンプルなデータ収集アプリケーションだった。1998年に登場したGoogleは、クロールの規模を拡大し、リンク構造を検索に反映させた。そのGoogleが昨年末に音声検索が可能な「Google Mobile App」の提供を開始した。iPhoneを持って「Pizza」と話しかけるだけで、自動的にユーザーがいる場所の近くのピザ屋がリストされる。その背後では、近接センサーがユーザーの端末を持つ状態を把握し、マイクで受け取ったオーディオを言語に解析、端末のロケーション機能も活用している。以前はキーボードのみがWebとわれわれを結ぶインタフェースだったが、「マイクやカメラなど各種センサーを組み合わせた未来を、われわれは体験し始めている」(O'Reilly氏)。赤ん坊が認識したモノを見たり触ったりしながら遊び始めるように、Webも賢く成長しているのだ。
例えばAMEEという電力のスマートグリッド・プラットフォームの場合、冷蔵庫のモーターが動き出す時の消費電力の上がり方など家電製品のふるまいから、その製品モデルを特定し、省電力性に優れたモデルへの買い換えを含めた省エネ対策を提案する。ユーザーが入力しなくても、メーターが自動的に把握してくれるのだ。
Webとセンサーの結びつきは、蓄積されたデータに隠れていた意味も掘り出し、よりスマートな利用を可能にしている。このようなWebと世界の結びつきによる爆発力を、O'Reilly氏は「Web 2.0 + World = Web Squared (二乗)」と表現していた。