Windows Vistaの新UIプラットフォームとして発表され、大きな話題となった「Windows Presentation Foundation(WPF)」。しかし、その後の普及は当時の想定ほど進んでおらず、コンシューマー向けでは徐々に広がりを見せてきたものの、ビジネス分野では依然として苦戦を強いられているというのが実情だろう。
そうした事態に陥った要因の1つとして、発表当初にビジュアル面が強調されすぎた点が挙げられる。同社でエバンジェリストを束ねる長坂一則氏も過去の啓蒙活動を振り返り、「見た目の派手さをアピールしすぎていた点を大いに反省している。WPFには、ビジネスアプリケーションにこそ活用できる本質的な魅力がある」と分析する。
では、WPFの"本質的な魅力"とは一体どのようなものなのか。本稿では、同社エバンジェリストの長坂氏、大野氏の話を基に、WPFの特徴とそこから生じた誤解に触れながら、WPF本来の魅力とその利用方法について紹介しよう。
派手なWPFに毛嫌い
WPFは、.NET Framework 3.0の目玉機能として開発されたUI技術だ。2Dのみならず3Dにも対応した表現力を持ち、映像や音声を扱えるうえ、強力なデータバインディング機能も備える。Direct3Dと呼ばれるAPIを活用することで、GPUによって描画処理を実行することが可能。ベクターグラフィックのアプリケーションを作成することもできる。
このような特徴を持つWPFは、発表当初、その特性から華美な側面ばかりが取り沙汰された。発表会や講演でも、観客受けの良い派手なデモが多く紹介された。その結果、エンターテイメントアプリ向けの実行基盤という認識が強まり、「業務アプリケーション開発者の関心が薄れる」(マイクロソフト デベロッパー & プラットフォーム統括本部 ITエンジニア テクノロジー推進本部 ブロードエバンジェリズム グループ デベロッパー エバンジェリスト 大野元久氏)という事態に陥る。
.NET Framework 3.0発表当時に紹介されたWPFのサンプル |
また、WPFのUIは、「XAML」というXMLベースの独自マークアップ言語によって定義されるが、「これが.NET Frameworkをブラックボックス化するものという誤解を生み、一部のエンジニアから敬遠される」(大野氏)といった結果を招いてしまったという。
誤解が重なり業務エンジニアからは遠い存在に
大野氏らのコメントからもわかるとおり、これらはいずれも誤解にすぎないのだが、リリースから2年以上が経過した現在でも、業務エンジニアの間ではこうした印象が依然として色濃く残っている。読者の中にも同じような認識を持つ方が多いのではないだろうか。
本来、高度なアプリケーションをXAMLで簡単に開発できるWPFは、エンタープライズのエンジニアにも好意的に受け入れられるはずの技術。ビジネスアプリケーションを進化させる可能性を十分に秘めているはずだが、その特徴が悪いほうに解釈され、エンタープライズからは縁遠い技術となってしまった。