KTNスキャナーモジュール

NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は、NTTが開発した光を自在に曲げられる電気光学結晶(電界を加えることにより材料の屈折率が変化する結晶)『KTN』(タンタル酸ニオブ酸カリウム、KTa1-xNbxO3)を用いた光偏向モジュール「KTNスキャナー」を、研究機関向けに評価用サンプルとして販売すると発表した。

この製品は、従来製品の1/100以下のサイズで、100倍以上の高速動作が可能だという。

現在、レーザ加工、イメージング、プリンタ・コピーなどで光を曲げるのに使われているスキャナー素子としては、ポリゴンミラーやガルバノミラー、MEMSなどが広く用いられているとのことだが、これら従来の素子は、素子のサイズや動作速度に限界があり、ランダムに光の方向を制御することは困難だったという。KTN結晶を用いた光スキャニングは、 機械的な駆動部分が無く、電子の移動と外部電界によって光を制御するため、従来にない高速動作が可能だという。また、結晶に電極を形成したシンプルな構造のため、光偏向モジュールは約2×3×6cmの小さな筐体に収めることが可能だという。

販売するKTNスキャナーモジュール

KTN結晶を用いた光スキャニングでは、加える電圧と光の進行方向が一対一に対応し、また動作速度が極めて高速であることから、電圧印加方法を工夫することにより、柔軟な光ビームスキャナー動作が可能で、レーザ加工、3次元計測、光通信、ディスプレイ、光記録媒体(DVD等)、イメージング、センシング、プリンタ・コピーなど、幅広い分野において、利用されることが期待されている。

NTT-ATでは、2009年6月2日より米国ボルチモアで開催されるレーザおよび電気光学国際会議(CLEO/IQEC 2009)の併設展示会への出展をもって、サンプル販売を開始する予定だ。

NTTの研究所ではKTNスキャナーの開発に続き、KTN結晶を可変焦点レンズとしても動作可能なことを見いだし、1マイクロ秒で焦点距離を変えられることを実証。これは、従来の可変焦点レンズの1000倍だという。そして今後は、KTNスキャナーとこの高速制御可能な可変焦点レンズとを組合せることで、高速3次元スキャナーが現実のものとなり、3次元計測器や、立体レーザスキャンディスプレイなどへの適用が可能だという。

3次元計測器への応用イメージ