GoogleのOpen Handset Alliance(OHA)が推進する携帯電話向けオープンソースプロジェクトである「Android」を、組み込みシステムで利用し、その標準化、共同開発、普及促進を図ることを目的とした一般社団法人「Open Embedded Software Foundation(OESF)」が3月24日、設立総会を開催し、その活動を本格的に開始した。
Androidを搭載した携帯電話は、日本でも近々市場に登場すると言われており、年内には世界市場で50機種を超すAndroid搭載携帯電話が登場するとも言われている。
OESFの代表理事を務めるアイ・ピー・ビジョン取締役の三浦雅孝氏 |
OESFは、「Androidをベースとした組み込みシステムの開発、構築などの事業に携わる企業により組織され、会員企業間での技術情報の共有、ベースとなるシステムの共同開発、技術者の育成、組み込み市場に対する共同マーケティングなどを通じて、市場の発展と各会員の事業の拡大を目指して組織されたもの」(代表理事を務める三浦雅孝氏)という。
また、複数の企業で課題を解決することにより、「1社では時間的にも、規模的にも解決できない課題を、OESFおよび目的に応じてOESF内に組織されるワーキンググループ、プロジェクトを通じ、より迅速に実現することで、市場の発展を目指す」(同)とする。
具体的には、組み込みシステムで共通となるフレームワーク、コンポーネント、モジュールなどを共同で開発し、企業間で共有することにより、生産性の向上とメンテナンスビりティの向上、開発投資の削減を目指すほか、成果をオープンソースとして共有することで、各企業での開発投資の削減も狙うという。
なお、OESFでの成果は、オープンソースの精神の基、Apache License 2.0を基本に会員間のみにこだわらず公開することで、システム開発に関わる企業に新たなビジネスチャンスとして提供される予定だが、会員には成果物の優先使用などの権利が与えられるという。
Androidを組み込みに用いるメリットについて三浦氏は、「組み込み機器に対し、新しいサービスが求められている。Androidベースでの開発を行うことにより、今までの考え方と違ったUIやアプリケーションが使える可能性が出てくるようになるほか、外部ライブラリなどの活用や、団体共有の資産を内部資産的に活用できるようになるメリットがある」とする。
同団体が対象とする分野は、「STB」「VoIP」「家電」「モバイル機器」「計測/制御」の5分野だが、「これは、OESF内で立ち上がるワーキンググループの問題」(同)であり、「新たに対象分野を拡大する可能性もあるが、その場合はワーキンググループの設立も考えるので、1社での参加ではなく、複数社で参加してもらいたい」(同)とする。
参加企業は3月23日17時時点で23社。「年度末を控えており、4月の取締役会での承認を経て参加する予定の企業も多数存在している」(同)としており、年内で100社程度の会員規模になることを見込む。
また、同日、台湾支部の活動も開始。日本企業と台湾企業との情報流通および共同開発なども考えているほか、2009年6月にはOESF韓国支部の設立も予定しているほか、OHAなどとの連携も予定しているという。
同団体に関しては、Googleからも「趣旨に全面的に賛同する」とのコメントが出ており、「OHAのオープンソースプロジェクトと連携し、重複のない開発を期待するとともに、Googleは携帯市場に集中しているため、組み込み業界に対するOESFの活動に期待する」としている。また、「家電の中心が日本および台湾、韓国、中国といったアジアであり、日本でのリーディングを期待するが、ガラパゴスにならず国際的な活動に発展してもらいたい」とし、日本での活動に期待しているとした。
Androidの動作デモを行っていたアットマークテクノの「Armadillo-500 FX」 |
同じくデモを行っていたエム・クーパーズのAndroid実装Touch Panel PC(8.4型パネルで、Atom N270を搭載、Wi-Fi、HSDPA、Bluetoothに対応する) |
なお、OESFへの参加資格は「国内外問わずに法人であること」と、「趣旨に賛同できること」のみとしている。参加費用については、入会金が10万円、年会費は10名未満24万円から、5,000名以上120万円まで従業員数で7区分に分けられており、5,000名以上の企業の場合、事業部単位での入会が可能となっている。このほか、1口20万円/年の賛助会員の受付も行っているという。