グレープシティでツール事業部事業部長を務める市川利弥氏。ツールに関する開発・マーケティング・販売などすべてを統括している

古くからバラエティに富んだ開発コンポーネントを提供しているベンダーとして知られているグレープシティ。同社の仙台本社はロッジ風の社屋であり、日本ではあまり例がない"自然と調和した"労働環境が整備されているという話も聞きます。今回は、同社でツール事業部事業部長を務める市川利弥氏とツール事業部マーケティング部部長を務める福地雅之氏に製品開発戦略について話を聞くとともに、開発者の方々が働く現場にお邪魔させていただきました。

--御社の成り立ちを簡単に教えてください--

市川氏: 当社は学校会計ソフトウェアの販売からスタートしました。このソフトはVisual Basic 2.0によって開発されており、米国製の開発用ライブラリが用いられていました。同ソフトは、開発作業時間の削減に役立ち、とても便利でした。当時(1990年代初頭)、米国にはこうしたツールがたくさんあったのですが、日本にはほとんどありませんでしたので、日本語化して販売することになったのです。

--米国発のソフトウェアはすぐに日本市場で受け入れられたのでしょうか?

市川氏: 自分で作ったツールと異なり、商用製品は開発者にとって、いわば、"ブラックボックス"です。したがって、すぐにはそのよさや可能性が伝わりませんでした。しかし、開発者の方々は商用製品を実際に使うことで開発作業の生産性が向上することをわかってくれたようで、徐々に広まっていきました。

--御社の製品ラインアップは、ローカライズ製品と自社開発製品の2本立てですが--

市川氏: 創業時からこの戦略で製品を展開しています。トレンドに合った製品をいち早く市場に出したい場合は、ローカライズ製品による提供で対処しています。開発ツール市場は、やはり米国が牽引しており、国内では見られない面白い製品が米国にはたくさんあります。ただし、海外製品を国内で使うには、仕様に手を加える必要があります。

一方、初めから日本国内市場のニーズに特化した製品の場合は、自社で製品を開発します。そもそも、文字コードが1バイトのアプリケーションと2バイトのアプリケーションでは構造が異なります。また、日本企業の独特の文化に帳票があり、これは海外製品では対応が難しいのです。

--製品分野をコンポーネントに絞っている理由は?

市川氏: コンポーネントは再利用できるのが最大の強みですが、それにより、顧客は開発効率を向上させることができます。当社の場合、特にユーザーインタフェース(UI)に関するコンポーネントに力を入れています。というのも、UIの開発には時間と工数がかかるので、ユーザーの需要が多いからです。当社としても、エンジニアの方には、コンポーネントを活用してUI開発の効率を上げ、その分、開発の本分であるロジック部分の設計や構築に打ち込んでいただきたいと考えています。

--今、さまざまなベンダーが"クラウドコンピューティング"に関する戦略を発表していますが--

市川氏: コンポーネント市場からクラウドコンピューティングを見た場合、特に変化はないと考えています。例えば、マイクロソフトのクラウド・プラットフォームであるAzureにはコンポーネントを乗せる必要があり、その開発にはツールが使われるからです。また、クラウドコンピューティングは「有るものを使う」風潮とも言え、これはコンポーネントの位置づけが高まることを意味します。Azureのコンポーネントを開発するためのツールを製品化できるよう、当社としても研究を行っていきます。