米IBMと千葉県がんセンターおよび千葉大学は、小児がんの一種である神経芽腫の新しい治療薬を開発することを目的としたプロジェクト「ファイト!小児がんプロジェクト(Help Fight Childhood Cancer Project)」を開始すると発表した。
このプロジェクトには、IBMが行っているワールド・コミュニティー・グリッド(以下、WCG)を活用する。
WCGは、個人や企業が所有するコンピューターのアイドリング時の処理能力を寄付することで「仮想スーパー・コンピューター」を作り、医療や環境といった全世界的な課題の解決を目指す研究プロジェクトに演算処理能力を提供し、支援する活動。
WCGには現在、200カ国以上からの43万人以上が参加者し、120万台以上のコンピューターが接続されており、これまで「ゲノム比較 」「がん撲滅支援」「ヒトたんぱく 質解析」の3プロジェクトが終了し、「AfricanClimate@Home」「筋ジストロフィー 治療支援」の2プロジェクトが計算結果の解析フェーズに入り、現在は6つのプロジェクトの計算を実行中だという。
小児がんは、一般に15歳未満のこどもに発生する悪性腫瘍を指し、日本では事故に次いで子どもの死因の第2位となっており、中でも神経細胞から発生するがんである神経芽腫は最も治りにくく、患者の生存率が40%未満だという。
今回のプロジェクトでは、WCGを活用することで、薬剤の候補となる化合物を見つけ出す実験シミュレーションにかかる年月を短縮し、2年で完了する予定だという。具体的には、 、長く神経芽腫の遺伝子研究を進めてきた千葉県がんセンター研究局長の中川原章博士が率いる研究チームがWCGを活用し、神経芽腫の新しい治療薬の開発を目指し、がん細胞の増殖を助けるたんぱく質分子であるTrkB受容体、ALK受容体とその下流シグナル分子SCxxの3つに対し、その機能を阻害できるような正しい構造と化学的な性質を持つ新しい候補薬剤を、約300万個の低分子化合物との組み合わせをシミュレーションすることで見つけ出すという。