グーグルは16日定例会見を行い、製品開発本部長の徳生健太郎氏が国際化担当として携わった広告プロダクト「Google AdWords」の歴史を振り返った。「大企業のような大金を出さなくても、中小企業や個人の広告主でも自分の持ち味で勝負のできる広告ができるよう、開発に携わってきた」と述懐。その目的を"ネット社会の活性化"と総括した。
「価格を下げて競争を促す」という戦略を実行
Google AdWordsは1999年にスタート。徳生氏は2003年に入社した当時、Google AdWordsのグローバル展開の担当プロダクトマネージャーだった。当初は、クレジットカードが全世界に普及していたわけではなかったため、「ペイメントシステム」と呼ばれる広告料徴収システムの構築などで苦労したという。
Googleの検索サービスが世界展開する中、「何でAdWordsはこんなに遅いんだ」という経営サイドからの叱咤激励もあり、Google AdWordsの国際化も一気に加速。「2004年3月には、わずか1日で20カ国語でのGoogle AdWordsをリリースした」(徳生氏)。
その後、E-Commerceが台頭。その際グーグルでは、50円だったクリック単価を一気に7円までに値下げ。広告代理店からは驚かれたが、「価格を下げて競争を促す」という戦略の下に低価格路線を実行した。
「はんこ」が日本最初のヒットキーワードに
その結果、中小企業などのGoogle AdWordsへの広告出稿のハードルが急速に下がり、「はんこ」というキーワードが、検索ページトップとその横の枠が広告で埋まった日本で初めてのキーワードになった。
「保険や中古車というキーワードが埋まりやすいと思われるかもしれないが、最初に『はんこ』というキーワードで全て埋まったことが、AdWordsの特徴を表している」(徳生氏)。
グーグルではさらに、高いお金を出せば検索トップに掲載されるのではなく、「入札価格×クリック率」によって、掲載順位を決める方式を採用。これにより、「大企業のようにお金を出さなくても勝負できる」(同氏)プラットフォームを用意。
同氏はこれを「A Level Playing Filed」と表現。「自分の持ち味を生かした広告で、"同じ土俵"で勝負できるようにした」。
「コンテキスト連動ターゲティング」でブログにも広告出稿
グーグルではさらに、「コンテキスト連動ターゲティング」を採用。これは、自動的にWebページの内容やテーマを機械的に把握し、そのテーマにあった広告を掲載するというもの。
これにより、ブログページなどにも広告が出稿されることになり、「コンテンツ制作側が少しでもお小遣い稼ぎできるようになり、ポータルサイトでなくてもコンテンツを提供しようという好循環が生まれた」(徳生氏)。
さらに、AdWordsはモバイルへも展開。モバイル広告は、まず日本で最初に始まったというが、その理由を徳生氏は「明らかに成長が見込める分野だったから」と振り返る。
出稿キーワード決定も、グーグル側から候補リストを提供
同氏はこれらの取り組みにより、Google AdWordsが「(広告主にとって)あらゆるコンテンツとつながることができる」広告ツールであると強調。「大規模サイトから、テーマの絞られた専門サイト、個人のブログまで、隅から隅まで手が届くようになっている」。
また、広告主が5つの項目を設定するだけで、瞬時に広告が掲載されるようになると説明。「特に広告の知識がなくても、簡単に始められるようになっている」とも話した。
さらに、広告出稿の際のキーワード決定も、グーグル側から候補リストを提供し、競争が比較的少ないキーワードを選ぶことも可能。誘導先のサイトにどういう写真を入れればいいか、どういったデザインのサイトにすればいいかなどについても、アドバイスできるツールも提供している。
徳生氏は、これらを振り返った上で、Google AdWordsの目的は、単なる広告ツールではなく、「情報とユーザーを結びつける、ユーザーとユーザーを結びつけることで、ネットの民主化を実現することにある」と説明。
「ネットがどんどんつながって活性化し、なかなか見つからないようなE-Commerceも、検索すればいい商品が飛び出してくる」状態がGoogle AdWordsの究極の目標であると総括した。
徳生氏によれば、Google AdWordsの日本のネットユーザーへのリーチ率は77%。100%となるまで、同氏とグーグルの挑戦は続きそうだ。