ソフトウェアのライセンス更新やサポートの料金は、ソフトウェア企業にとって主要な利益の源泉となっている。一方でソフトウェアを利用するユーザー企業にとっては、ビジネスの原動力であると同時に、その高い費用が悩みの種にもなっている。金融危機で多くの企業がコスト対策にシビアとなるなか、より安いプランを提案するライバル、たとえばSaaS (Software as a Service)へと乗り換えていくのか、あるいは大手ソフトウェア企業らが対抗のために安い料金を提案するのか、その動向に注目が集まりつつある。
Microsoftを例にとるまでもなく、ソフトウェア企業の収益率が非常に高いことは周知の事実だ。特にライセンス更新やサポート費用は契約期間中に継続して発生するため、ソフトウェア企業側にとっては非常に美味しいビジネスでもある。企業システムの更新サイクルは短くて3年、平均すると5 - 7年ほどであり、この間は安定した収入が約束される。ソフトウェア事業自体の利益率が50%程度の一方で、ライセンス更新やサポート関連の利益率は80%以上ともいわれ、際だって大きいことがわかる。こうした魅力もあり、大手企業らはソフトウェアとサポートの比率を次第に高めつつあり、米Oracleは直近の同社2009年度第2四半期で全売上の51%が同事業からのものとなっている。しかもこの比率は年々数%ずつ上昇している。総合ITの米IBMもハードウェアの比重を減らしてソフトウェアとサポートの比重を増やしており、2008年第4四半期決算でサポート部門だけで50%以上、ソフトウェア部門を加えると実に8割弱が関連事業からの売上だ。
これについて、顧客やアナリストらの反応を集めた記事がWall Street Journalから出ている。同記事によれば、たとえばOracleでは販売したソフトウェアパッケージ料金の一定割合をメンテナンスやサービス費用として徴収している。この割合は一律22%となっており、高額のソフトウェアを導入したユーザーほど負担が大きい。金融危機でユーザーのIT投資能力や意欲が落ち込むなか、もしSAPやSaaS企業を含むライバルらが料金引き下げでOracleに対抗した場合、同社も間を置かずして料金体系見直しを迫られる可能性があるというのが同記事の趣旨となる。
だが、Oracleユーザーから今後どの程度離反組が出るかは未知数だ。たとえば過去の2000年直後のIT不況においても、Oracleは料金ポリシーそのままに生き残り続けてきた。SaaS企業でライバルの米Salesforce.comは、Oracle顧客のひとつである米EMCからのサービス契約を取り付けたと発表しているが、これがどの程度のインパクトを持つのかは不明だ。SaaSを導入する企業は年々増えてきているが、これは必ずしもすべてのシステムをSaaSに切り替えたことを意味するわけではない。また記事中では米Cowen & Co.のPeter Goldmacher氏のコメントとして「Oracleのメンテナンス契約を取り止める行為は愚かだ」と紹介している。その理由はOracleのサービスが他社に提供できないようなものであり、十分に差別化されているというものだ。
Oracleは3月18日(米国時間)に同社会計年度で2009年第3四半期(2008年12月 - 2009年2月期)決算の発表を予定している。新規ライセンスが減少に向かうなど、すでに前四半期の段階で金融危機の影響が見え始めている同社決算だが、今後、本丸であるライセンス更新やサービス売上にどのような影響が出てくるのかに注目したい。