セイコーエプソンは12日、同社の中・小型液晶ディスプレイ事業資産の一部をソニーへ譲渡する内容を含んだ提携に向けた協議を開始したと発表した。契約は法的拘束力を有する2009年6月末の凍結を目指すとしている。同社は、11日に特別損失662億円を追加計上するなど、純損失が1,000億円の見込みになると業績予想を修正したばかり。

中・小型液晶ディスプレイ事業は、エプソンの子会社であるエプソンイメージングデバイスが担ってきたが、景気後退によって稼働率と収益性が悪化。鳥取事業所への本社機能の集約や岐阜事業所の2009年度中閉鎖などの取り組みを行なってきたが、単独での収益回復は困難だと判断し、今回ソニーとの提携に至ったという。セイコーエプソン碓井稔代表取締役社長は、「技術だけでは運営できる状態ではなく、単独での継続は難しいと考えた」と苦しい胸の内を語った。

セイコーエプソン代表取締役社長碓井稔氏

現在ソニーは、低温ポリシリコンTFT液晶にフォーカスし、子会社のソニーモバイルディスプレイにリソースを集中しており、今回の提携によってエプソンイメージングデバイスの持つのアモルファスシリコンTFT液晶の技術力、設計力、生産力を提供することで、競争力の強化につながるとしている。ただし、有機ELディスプレイは今回の提携に盛り込まれてはいない。

同社は、2009年から2011年度の中期経営計画として、中・小型液晶ディスプレイ事業と半導体事業の見直しを進め、成長が見込めるプリンタ、プロジェクタ、水晶デバイス分野に必要なリソースを集中するとしている。