3月5日、ガートナージャパンが主催したイベント「ガートナーITインフラストラクチャ&データセンターサミット2009」にて、キリンビジネスシステムで情報技術統括部部長を務める関口克夫氏「データセンターに関する取り組み:グリーンIT化に向けて」というテーマの下、ゲスト講演を行った。同社の取り組みから、データセンターの電力供給への対策のポイントを探ってみたい。

キリンビジネスシステム 情報技術統括部 部長 関口克夫氏

キリンビジネスシステムは、飲料メーカーのキリンビールなどを含むキリングループの一企業。2007年7月のキリングループの経営体制の刷新に伴い、以降グループにおける同社の位置づけも新しくなった。

現在、キリングループにおける同社の主な役割は、グループ会社の情報システムのインテグレーション、ユーザーサポートである。「2007年のグループの経営体制の刷新により、グループ全体で共通する業務を担う3つの機能分担会社が設けられた。経理・総務部門を担う『キリンビジネスエキスパート』、不動産管理を担当する『キリンリアルシステム』、そして情報システム系の担当が『キリンビジネスシステム』という位置づけ」と説明する関口氏。グループ経営体制の下では、グループのIT資産を同社が一括管理し、特段の事情がない限り、グループ各社はシステム開発・運用業務のすべてを同社に委託する組織体制が敷かれているという。

一方、同社では1988年から自営の設備によるデータセンターの運営を行っている。同社では、現在、メインフレームである第一データセンターをはじめ、災害対策用なども含め4つのデータセンターを配備。しかし、グループ再編やサーバの配備増強といった昨今の状況に伴い、同社のデータセンターは電力供給不足の問題に直面したという。

そこで同社では、電力容量を400KVAから600KVAへ強化するなど、10年先までのキャパシティを見越した第一データセンターの改修を2004年に実施したものの、「電算機室にわずかな余地を残して2008年に電力容量を使い切る見込みになった」と関口氏。そこで、さらに2008年には第二データセンターが開設されたという。

しかし、こうした度重なる消費電力対策にもかかわらず、第一データサンターの電力容量不足の問題は本質的には改善されなかったという。関口氏は「大規模なシステム再構築プロジェクトの並行進行、キリングループのIT資産の集中化で第一データセンターの電力消費量は予想以上に増加した。室温設定の変更や消灯といった省エネ対策を施したが、焼け石に水だった」と振り返る。実際、第一データセンターの年間電力消費量は、2006年の564.2万kwhから2007年には574.9万kwhに、2008年には652.2kwhと大幅に増加したという。