クラスタストレージシステムベンダーのアイシロン・システムズ(以下 アイシロン)は3月11日、従来のXシリーズに加えて、ハイパフォーマンス分野向けのSシリーズと、バックアップ等のアーカイブ領域のNLシリーズを新たに追加した。

また、Xシリーズの最上位製品として、「Isilon IQ 36000x」を追加した。

今回新たに追加された機種

クラスタストレージは、それぞれがCPUやメモリ、ネットワークを持つ筐体を複数組み合わせ(最低3台から)、クラスタのような構成をとりながら、「OneFS」という独自の分散ファイルシステムにより、全体を1つのNASのように見せるアーキテクチャだ。拡張する場合は、システムをシャットダウンすることなく60秒で追加できるというメリットを持つ。

アイシロンは、ワールドワイドで現在約1000社の顧客を持ち、うち15%が日本の企業だという。顧客のほとんどが大規模ユーサーで、追加というよりは、リプレースの案件が多いという。なお、同社の2008年のワールドワイドでの売上は約1億1440万ドル(約110億円)となっている。

アイシロンのワールドワイドの顧客数(上)と売上げ(下)の推移

企業では、従来は基幹系システムを中心とするデータベースなどの構造化データが多かったが、最近はオフィス文書、メール、画像、動画などの非構造化データが増大しており、各企業でもストレージの追加に頭を悩ませている。

米アイシロン・システムズ チーフ・テクノロジー・オフィサー ポール ラザフォード氏

米アイシロン・システムズ チーフ・テクノロジー・オフィサーのポール ラザフォード氏は「アイシロンは2003年にクラスタストレージのアーキテクチャを発表したが、そのときからデータ量の増大という問題に対する準備ができていた。大容量でもシンプルで簡便に管理できるのがOneFSの大きなメリットだ。他社にとっては、真似することができない大きな障壁だ」と述べ、今後も当分クラスタストレージシステムにおいては、アイシロンがリーダーであり続けるという自信を見せた。

また、「今回の新シリーズで、多くの競合に対抗できる」と述べ、製品ラインナップの拡張による新たな市場獲得に期待を寄せた。

新シリーズであるSシリーズに追加された「Isilon IQ 5400S」は、5.4テラバイトの容量を持ち、最大96ノード、518テラバイトまで拡張できる製品。Xeonプロセッサを2台、16GBのSDRAMメモリを搭載し、XシリーズのSATAドライブに対し、SASドライブを搭載する。容量よりも高いパフォーマンスを要求する領域での用途を想定した製品だ。価格は、5月29日までのキャンペーン価格で、最小構成(16.2TB、IQ5400S 3台、Infiniband スイッチ)で、1480万円からとなっている。

「Isilon IQ 5400S」

NLシリーズに追加された「Isilon IQ 36NL」は、36テラバイトの容量を持ち、最大96ノードで3.45ペタバイトまで拡張可能だ(最小は7ノードで252テラバイト)。現在テープドライブが使用されているアーカイブ領域での利用を想定している。レスポンスよりも、容量を求めるユーザー向けの製品だ。価格は、5月29日までのキャンペーン価格で、最小構成(252TB、IQ36NL 7台、Infiniband スイッチ)で、5030万円からとなっている。

「Isilon IQ 36NL」

そして、主力のXシリーズの最上位モデルとして投入された「Isilon IQ 36000x」は、従来の最上位モデル「Isilon IQ 12000x」の3倍にあたる36テラバイトの容量を持つ。最大で96ノード、3.45ペタバイトまで拡張可能だ。その他12000xに比べ、Gigabitイーサネットが2倍の4ポートに、メモリも2倍の8GBに拡張されている。価格は、5月29日までのキャンペーン価格で、最小構成(252TB、IQ36000x 7台、Infiniband スイッチ)で、9300万円からとなっている。

「Isilon IQ 36000x」

代表取締役 瀧口昭彦氏

アイシロンの製品はパートナーを通じて販売されるため、最終価格はパートナーが決定するが、同社 代表取締役 瀧口昭彦氏によれば、ギガバイトのあたりの価格は、キャンペーン価格としては5400Sで914円、36000xで370円、36NLで200円程度を想定しているという。

また、ポール ラザフォード氏は、時期は未定だが、すでにEMCなどが製品化している、SSD(Solid State Drive)を利用した製品も今後投入していく予定であることを明らかにした。