三菱電機とマシンビジョンベンダの米Cognexの日本法人であるコグネックスは3月10日、2008年8月より進めてきた両社の技術連携によりFA向け画像処理システム「In-Sight EZ」を開発したことを発表した。4機種が用意されており、価格は27万5,000円(税別)からで、2009年4月から三菱電機の代理店を通して販売される予定。

Cognex+三菱電機のロゴ

CognexのMVSD部 社長であるRobert Willett氏

CognexのMVSD(Modular Vision System)部 社長のRobert Willett氏は、「今やマシンビジョンは製品の品質向上とコスト削減にとって、必要不可欠なものとなっており、その分野も半導体やエレクトロニクス分野を中心に自動車、食料品、医薬品など多岐にわたる」とマシンビジョンの有用性を語る。

日本では半導体およびエレクトロニクス分野から採用が進んだマシンビジョンだが、現在は日本の半導体業界の相対的な地位低下にともない市場規模が縮小、売り上げの7割がFA向けとなっているという。

ただし、「画像処理を含む工場のオートメーション化の推進および現地製造のコスト増などの課題の発生により、生産拠点を海外から自国へと回帰する動きが世界的な製造業のトレンドとして出ており、日本も同様の動きを見せつつある」(同)としており、日本のFA市場はCognex全体にとっても重要な市場になるとした。

また、トレーサビリティ用途として、食品や医薬品などの健康促進/維持系の品物のID読み取りが、「消費者保護といった政策が打ち出される昨今の情勢にもマッチしており、品質の保持、向上につながるマシンビジョンの需要は増しつつある」(同)とする。

コグネックス 代表取締役社長 井上誠氏

しかし、マシンビジョンをFA向けに使用する場合、Cognexが得意としてきた半導体などの分野とは異なり、機器それぞれのカスタマイズや高度な画像処理などは不要となるほか、製造ラインのPLC(シーケンサ)と接続する必要があった。半導体のチップ位置決めのような高度な処理を中心に提供してきた同社のマシンビジョンは、FA向けに使用しようとした場合、設定項目などが多く、開発部分も多いため、「使いづらい」(コグネックス 代表取締役社長 井上誠氏)という声が多々あったという。また、PLCを自社で持たないため、採用されづらく、「FA市場に喰い込むためには、使いやすい製品の開発とPLCを有したメーカーとの連携が必要だった」(同)という。三菱電機は、PLCを持つがマシンビジョンを持たないメーカーであり、PLCとの相性は良かったようだ。

Cognex + Mitsubishiの連携

こうして開発された新商品であるIn-Sight EZシリーズは、「とにかく"カンタン"をキーワードにして開発された日本仕様の独自製品」(同)であり、以下の5つの"カンタン"を標榜している。

  • カンタン設定
  • カンタン検査
  • カンタン接続
  • カンタン設置
  • カンタン運用

設定に関しては、従来のカスタマイズにより開発したソフトウェアを内蔵するのではなく、すでに用途に応じた項目が複数用意されたソフトウェアを内蔵、用途に応じた自動設定も可能なほか、検査についても「一般的なFA用途の8割に対応する分野を用意、それを選ぶだけで検査を実行することが可能となる」(同)という。

また、接続についても、内部にプロセッサを搭載することで単体で処理を実施、イーサネット経由で外部にデータを送信することが可能となるように「三菱電機のPLCとつながるように開発を行ってきた。その結果として、つなげるだけで使用することが可能となっている」(同)としており、三菱電機の「MCプロトコル」、および産業用プロトコル「CC-Link」などに対応することで、接続するだけで使用可能な環境を実現する。

ビジョンシステムとシーケンサの接続(左)およびシーケンサと表示器(GOT)への接続(右)(通信ユニットが不要なほか、シーケンスプログラムも不要)

さらに、運用については三菱電機のFA統合ソリューション「e-F@ctory」とシームレスにリンクすることが可能であり、やはりつなげるだけで運用を可能にする工夫が施されている。なお、価格については、米国企業としては、「かなり思い切った値段戦略に出た。競合の価格と比べても2/3程度に抑えた」(同)とする。

販売は、三菱電機の機器代理店であり、かつコグネックスとのASP(Automation Solution Provider)契約を締結した代理店が担当する。三菱電機の代理店は約80社ほどだが、販売を開始する4月の時点では7社程度がASP契約を締結する見込みで、順次拡大できれば、とし、自動車、半導体/FPD、食品(包装)/飲料(製缶)関連などをターゲットに販売を推し進めていければ、としている。

In-Sight EZを持つ井上社長(左)とIn-Sight EZと三菱電機の各種製品との接続イメージ

なお、井上氏は、「これまでのCognexはプロが使う一眼レフのカメラのイメージだったが、In-Sight EZはそれをコンパクトデジカメへと転換させるものであり、それにより画像処理システムのデファクトスタンダードを狙っていく」とする。そのため、「今後はサーボなどとの連携も図っていくほか、検査やトレーサビリティの対応領域拡大、半導体などの高度領域で培ったソフトを用いての内蔵ソフトのバージョンアップなどを行っていく」(同)としており、初年度で1,000万ドルの売り上げを目指すとしている。

製品の発売にともない、握手を交わす井上氏(左)、Willett氏(中央)、井口功氏(三菱電機 機器事業部長)