「美しい森林(もり)づくり全国推進会議」などは7日、京都議定書で日本が約束した温室効果ガス6%削減目標の約3分の2にあたる3.8%を国内の森林で吸収していく対策の重要性をPRし、3月8日を「フォレスト・サポーターズの日」と定め、同会議代表の出井伸之氏(元ソニー会長)や、積極的な間伐材利用を展開しているmore trees代表でアーティストの坂本龍一氏らによるトークイベントを東京・港区立エコプラザで開催した。
今回のトークイベントは、約100人の一般の参加者とともに、「木を切るべきか否か」という基本的な疑問から、「間伐」の必要性についてまで、改めて考える機会となった。ここで、坂本氏や出井氏のトークに入る前に、日本の森林における間伐について触れておこう。
「(日本の森林では)間伐などの手入れを適時適切に進めていく必要がある」と訴えている林野庁は、2007年度からの6年間で330万ヘクタールの間伐を進めるなどの「美しい森林づくり」に取り組んでいる。日本の民有林の人工林面積約800万ヘクタールのうち、最も多く占めている齢級は8~9齢級で、約40~50年前に植えられた植林たちだ。
このころの植林は、終戦後の荒廃した国土を回復させることなどを目的とし、国が強力に植林活動を推進。国土回復とともに、これまで燃料として使用されてきた薪(まき)に代わりガスや石油といった新たなエネルギーが普及し、高度経済成長期には住宅用の建材需要が拡大、"燃料山"といわれた山々に次々と植林が行なわれたという経緯がある。
そして今、間伐は、林内を太陽光で明るくし地面に生える植物や森林土壌を回復させ、良質な水を発生させ生息動物たちにとっても恵まれた土地へと変化させる役目があるとし、健全で活力ある森林を育てるために必要な作業とも位置づけられている。
こうした背景のなか、民間で推進する全国組織「美しい森林(もり)づくり全国推進会議」は、「森にふれよう」「木をつかおう」「森をささえよう」「森と暮らそう」という4つの行動で森林をサポートしていくための、個人・企業・団体の共通プラットフォーム「フォレスト・サポーターズ」を展開。一人ひとりのアクションや企業の取り組みを、フォレスト・サポーターズを通じて紹介し、国民運動へと拡大させようというのだ。
同会議に賛同する坂本氏は、「日本は建材として売るために、戦後に杉をいっぱい植えたんですね。それから50年ぐらい経って、経済成長して、その当時に植えた木々が使えるころになると、そうした植林は使われず、海外の安価な木材を使ってきてしまった。これは本末転倒で、今では植えられた杉のほうも悲鳴をあげて、種の保存の危機を感じてたくさんの花粉を出すという悪循環に陥っている。植えてあげたら使ってあげるべきだ。放置されている森は日光の入り度合いが少なく、二酸化炭素吸収量も少ない。温暖化のスピードが速まっているから、これから新たな森をつくっても間に合わない。だから、今ある森に手をかけて、森全体を健康にしてあげないといけない」と語った。
さらに坂本氏は、日本人のカーボンオフセットへの意識についても触れた。「日本人は、普通に都会に暮らしているだけで、一人当たり年間平均10トンの二酸化炭素を排出する。経済成長著しいインドで平均1トンですよ。ライフスタイルの違いでこうも異なる。日本人はインド人の約10倍、地球に負荷を与えていることになる。だからといって、日本人全員が森に篭もるわけにもいかないから、こうしたカーボンオフセットの仕組みを使って、なるべく排出量と削減量を相殺していくという心構えを常識的にしていく。個人も企業も行政もそうなっていけたらいいなと思いますね」と。
また、同会議のリーダーである出井氏は、「日本は工業化の推進を優先するあまりに、農業や林業、水産業という第一次産業を大事にしてこなかった。子供たちへの教育などにも工業化のほうが先にきて行き過ぎちゃった部分もある。日本の第一次産業は農業だけと決めつけず、これからは林業もバイオといっしょに考えていかなければならない。そのためにまず、木材の品質をもう少し上げてほしい。それからもっと使うことを考えなければならない」と語った。
同会議では、国土の7割といわれる日本の森林から、木々を収穫して、上手に使い、再び植えて育てるという森林づくりの環をつくりだすことを理想としている。こうした取り組みに賛同する人や企業は、簡単にフォレスト・サポーターズに登録できるので、同サイトへアクセスしてみてほしい。