経済産業省は3月3日、商品やサービスのライフサイクル全体における温室効果ガス排出量をCO2量に換算して算定し、マークを使って表示する「カーボンフットプリント制度」の構築に向けた取り組みの一環として、同制度の背景・目的やCO2排出量の算定・表示方法などを内容とする「カーボンフットプリント制度の在り方(指針)」および「商品種別算定基準(PCR)策定基準」を公表した。

同制度は、日常的に購入機会が多い日用品などの非耐久消費財からの導入を見込む。耐久消費財では、既存のライフサイクル・アセスメント(LCA)手法による算定が行われているものから早期に導入し、将来的には適用範囲を広げる。サービス分野については、運輸・民生業務部門などでの検討を進める。

なお、2008年12月に開催した「エコプロダクツ2008」において、参加企業30社によるカーボンフットプリントを暫定表示する試作品を展示した。

エコプロダクツ2008におけるカーボンフットプリントの暫定表示例

指針の概要

算定対象とする温室効果ガスは、京都議定書の対象となる二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類。排出量は以下の式で計算する。

CO2排出量=Σ(活動量i×CO2排出原単位i)
※iはプロセス

算定範囲は、ライフサイクル全体(原材料調達、生産、流通・販売、使用・維持管理、廃棄・リサイクルの5段階)を基本とする。

算定事業者が自らの責任で収集する値を1次データ、自らの収集が困難で共通データ/文献データ/LCAの実施例から引用するデータのみにより収集される値を2次データと定義。算定では原則として1次データを取得し、2次データの使用は1次データの取得が困難な場合に限られる。

流通・販売段階および使用・維持段階においてさまざまなケースが想定されることから、シナリオを設定できる。シナリオ作成時には関係事業者を交えた公正・公平な議論に努め、必要に応じて拡大・縮小の見直しができるようにしておく。

例えば常温/冷蔵/冷凍販売のように生産段階や流通・販売段階で複数種類の商品が混流する場合は、全体の排出量から個別商品の排出量を推計する。これを配分と呼び、重量比や経済価値比などの配分方法は、商品特性やプロセス特性に応じてPCR作成時に定める。

商品を構成する部品・材料のうちライフサイクル全体での算定結果に大きな影響を及ぼさないものは、算定対象から除外できる。これをカットオフと呼び、その範囲は各ライフサイクルステージのCO2総排出量に対してそれぞれ5%以内とする。具体的内容や適用範囲は公正な議論を踏まえ、PCR作成時に恣意的に選択して排出量を低く表示しないようにする。

特定の原材料について複数のサプライヤー(調達先)から調達している場合は、原則として全てのサプライヤーから1次データを収集しなければならない。収集が困難で主要なサプライヤーから収集した1次データが50%以上の場合は、それを他のサプライヤーの2次データとして使用できると、PCR策定基準で規定している。

PCR策定基準では、算定条件(算定範囲、カットオフ基準、配分の考え方、シナリオ設定など)を定める商品種別の基準を定義した。同一分野で乱立しないよう、一定の公的関与の下で管理される仕組みを検討するという。

PCRの策定は固定的なものではなく、算定の正確性や簡便性などの観点から策定後も常時見直しや改善を行う必要があるとしている。

表示の基本ルールは以下の通り。

・共通ラベルを使用
・原則として、販売単位あたりのライフサイクル全体排出量の絶対値を表記。単位は「g(kg、t)」の絶対値とする
・原則として商品本体または包装資材に貼付するが、それ以外の表示も選択可能
・表示事業者は排出量の継続的削減に向けて努力しなければならない。数値目標は義務付けないが、目標を宣言する場合は追加表示を認める。
・詳細情報をインターネットなどで公開する

選択的措置として、基本的な表示に加えてCO2排出量に関する例外的表示も可能。具体的には以下の通り。

・追加情報表示: 従来製品や業界標準値に対する削減率、プロセス(算定段階)別や部品別表示、使用方法に関する表示(使い方により排出量が少なくなるなど)、単位使用量・数量当たり排出量
・耐久消費財における想定寿命(想定使用年数)の併記
・地域差、季節変動、サプライヤー差を伴う表示

今後の予定

2009年度からは説明会の開催やカーボンフットプリントフォーラムなどを通じてカーボンフットプリントの普及啓発を進め、試行事業を開始する予定だ。試行事業により抽出した制度上の論点・課題については、今後検討会で検討していくという。また鉱工業品のPCRについては、順次JIS/TS化するとしている。