セールスフォース・ドットコムは3月4日、都内でパートナー向けカンファレンス「Partner Summit 2009」を開催した。同カンファレンスでは、同社の代表取締役社長・宇陀栄次氏が「クラウドコンピューティング時代のITビジネス」というテーマで講演し、同日発表されたパートナー・プログラム「Force.comパートナー・プログラム」の詳細が発表された。

セールスフォース・ドットコム 代表取締役 宇陀栄次氏

宇陀氏は「世界のクラウドコンピューティングの市場規模が2011年までに950億ドル規模となる」というメリルリンチの調査結果を例に、今後、クラウドコンピューティングが成長していくことを訴えた。さらに、同氏は午前中に自民党の勉強会に呼ばれて、クラウドコンピューティングについて説明を行ってきたと語り、IT業界にとどまらず、日本全体にクラウドコンピューティングに対する興味が広がり始めていることを明らかにした。

クラウドコンピューティングを理解するためのキーワードとして、「デモクライタイジング」と「コモディティ化」が挙げられた。デモクライタイジングとは、資金に余裕があまりない中・小規模の企業が少ないコストで大企業と同等のITサービスを利用することができるようになったことだという。また、コモディティ化とは、企業にとって、ITが「使って当たり前のモノ」となり、もはや差別化の要因ではなくなったことを指すという。「使って当たり前のITには、生産性とスピードが求められ、それを実現するのがクラウドコンピューティングだ」(宇陀氏)

同社のプラットフォーム「Force.com」をベースとするクラウドコンピューティングのメリットを提示すべく、同氏は「定額給付金システム」を紹介した。同社は、ある市町村から定額給付金に関するシステムについて相談を受けたところ、3日間でプロトタイプを作り上げてしまったというのだ。同システムは一から構築すると800万はかかると言われており、同社の仕組みを用いれば、かなりのコスト削減が見込める。

セールスフォースが構築した「定額給付金システム」の概要

「定額給付金システム」の画面イメージ

さらに同氏は、「ITサービスITのコモディティ化によって、ハードウェアやソフトウェアの販売といったIT産業は縮小化が進むだろうが、あらゆる産業でのIT化が進むことでITサービス産業の可能性は広がるだろう。それを支えに、これからもクラウドコンピューティング時代におけるビジネスの拡大を図っていきたい」との意気込みを示した。それには、販売、開発、保守に関わるさまざまなパートナーと一丸となって、ビジネスを守り立てていかなければならないと、パートナーの重要性をアピールした。

セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 SE&サービス統括本部の保科実氏

続いて、常務執行役員 SE&サービス統括本部の保科実氏が、同日発表されたパートナー・プログラム「Force.comパートナー・プログラム」について説明を行った。同氏は、「当社はこれまでSaaSでCRMだけを提供しているイメージが強かったが、これからはプラットフォームを提供する企業としてパートナービジネスに注力していきたい」と述べた。「日本市場はパッケージソフトウェアよりも、プラットフォーム上に顧客のニーズに合ったソフトウェアを展開していくほうが適しており、CEOも日本でのパートナービジネス」に期待している(保科氏)

そうした同社の戦略を具体化すべく、Force.comパートナー・プログラムが発表されたというわけだ。同プログラムは、教育、コンサルティング、サポートの3つのサービス・メニューで構成される。

教育については、アプリケーション開発者・技術者を対象に、プログラミング言語「Force.com Apex Code」や、UI開発技術「Visualforce」を用いたForce.com上でのアプリケーション開発のトレーニングプログラムを提供する。これら基礎技術を2週間で修得可能な「トレーニングキャンプ・プログラム」も提供される予定だ。

コンサルティングについては、アジャイル開発手法に基づいた方法論を公開し、同社のコンサルタントが設計、開発のレビューを含む技術支援を提供する「エキスパート・サービス」を開始していく。保科氏は、ウォーターフォール開発手法では、顧客の要件を取り入れながら開発を進めるCRMはうまくいかないと指摘した。エキスパート・サービスは4月にリリースされる予定だという。

サポートについては、顧客からの問い合わせや対応履歴を共有することで、パートナー企業自身が迅速に問題に対応できるよう支援する。保科氏は、「問い合わせの対応履歴を集計したところ、ユーザー系の問題の解決にかかった時間の平均は1.5日、開発系の問題の解決にかかった時間の平均は2.5日と、非常に短かった。また、製品の不具合に対する問い合わせは1割だった。私が以前所属していたソフトウェアベンダーでは8割が製品の不具合に対する問い合わせだったと聞いている。プラットフォームが統一されたSaaSだからこそ、不具合が少ないのだ」と、SaaSの優位性をアピールした。