社団法人 情報処理学会は3月2日、東京都の国立科学博物館において情報処理技術遺産および分散コンピュータ博物館の認定式を開催した。

情報処理技術遺産は、「先人の努力の結晶である情報処理技術関連の歴史的文物を将来に長く保存し、次世代人の学ぶよすがとして伝えること」を目的として情報処理学会が認定するもの。「その時代において独創性または新規性が著しかったもの」、「その時代において性能が優れていたもの」、「情報処理技術の発展過程において一時代を画したもの」など14項目におよぶ指針が定められており、いずれかに適合する文物が候補として選ばれ、選考委員会により各種条件・基準と比較しながら検討が行われる。

また、分散コンピュータ博物館は、「情報処理技術遺産あるいはそれに準ずる歴史的文物を多数収集・保管している組織」を認定するもの。情報処理技術遺産と同じ委員会によって、同様の基準により認定される。

第一回となった今回は、100件を超える候補の中から、23の情報処理技術遺産と2つの分散コンピュータ博物館が認定された。認定された文物・組織は以下のとおり。

情報処理技術遺産
文物名 情報処理学会による説明 所有者 授与式の模様(クリックで拡大)
自働算盤 我が国初の機械式卓上計算機 梅田利行氏
川口式電気集計機及び亀の子型穿孔機 我が国初の統計集計機 総務省統計研究所
タイガー計算器 No.59 初期の手回し式計算機 国立科学博物館
九元連立方程式求解機 アナログ式計算機械 国立科学博物館
ETL-Mark II 初期のリレー式大型計算機 国立科学博物館
FUJIC 我が国初の電子計算機 国立科学博物館
大阪大学真空管計算機 初期の真空管式電子計算機 大阪大学
パラメトロン素子 我が国で発明された演算素子 早稲田大学
ETL Mark IVパッケージおよび磁気ドラム 我が国初のトランジスタ式実用計算機用の部品と記録装置 産業技術総合研究所
SENAC-1(NEAC-1102) 大型パラメトロン計算機 NEC
FACOM128B 現在も動態展示されているリレー式コンピュータ 富士通
MARS-1 国鉄座席予約システム 東日本鉄道文化財団 鉄道博物館
MUSASINO-1B パラメトロン計算機 NTT
OKITYPER-2000 多機能タイプライタ 沖データ
NEAC-2203 全トランジスタ化計算機 東海大学
HITAC 5020および関連部品 国産初の大型汎用コンピュータ 日立製作所
NEACシリーズ 2200モデル50 全IC化小型汎用コンピュータ 片柳学園 東京工科大学・日本工学院
H-8564 初期の磁気ディスク駆動装置 日立グローバルストレージテクノロジーズ
HITAC 10 我が国初のミニコンピュータ 東京農工大学 共生科学研究部 先端情報科学部門
TOSBAC-3400 マイクロプログラム方式の科学技術用コンピュータ 京都コンピュータ学院 洛北校
OKITAC-4300Cシステム ミニコンピュータシステム 京都コンピュータ学院 洛北校
JW-10 初の日本語ワードプロセッサ 東芝 東芝科学館
PC-9801 ベストセラーのパーソナルコンピュータ NECパーソナルプロダクツ
分散コンピュータ博物館
京都コンピュータ学院KCG資料館
東京農工大学情報工学科西村コンピュータコレクション

情報処理学会では、今後も調査を継続し、新規の情報処理遺産を毎年追加していく予定だ。