半導体大手の米Intelと台湾TSMCは3月2日(米国時間)、知的財産(IP)やSoC(System on Chip)ソリューション、技術プラットフォームにおける戦略提携で合意したと発表した。両社はMOU(Memorandum Of Understanding)を締結し、これに基づいてTSMCはIntelのAtomプロセッサコアをベースにした製品開発や製造が可能になる。組み込み向けプロセッサではカスタマイズのニーズが存在するが、こうした顧客の細かい要求に対応し、Atomの広範囲な販売体制を確立する。最終的にARMやSuperHが築いている家電などの組み込み市場を攻略するのが狙い。
提携に先立ち、両社は米カリフォルニア州サンタクララにあるIntel本社内で記者会見を開き、合意内容について概略を説明した。米Intelのウルトラモビリティ事業部SVPのAnand Chandrasekher氏は「あくまでAtomプロセッサの拡販を目的としたものであり、Intelの今後のプロセッサの投資計画、特に32nm世代以降の新規製造ラインに影響を与えるものではない」という点を強調している。
AtomはIntelが新たに開発した、同クラスとしては最小規模となる4700万個のトランジスタを搭載した省電力プロセッサ。2008年の登場以降、ネットブック市場の立ち上がりというトレンドにうまく乗れたことで、まったく新しいアーキテクチャの製品としては大きな成功を収めた部類に入る。だが一方で当初目指していたMIDのような小型インターネットデバイスの市場は思ったように立ち上がらず、家電市場への進出も足踏み状態だ。原因の1つはARMなどのライバル製品がすでに大きな市場を築いており、ライセンス供与によるさまざまなベンダーからの提供体制と、顧客からの細かいカスタマイズに対応する供給体制ができていることにある。現状のAtomではこれらすべてのニーズをカバーすることは難しく、今回のTSMCとの提携で弱点を補うことが狙いとみられる。現在のネットブックに加え、今後さらに市場拡大が見込まれるスマートフォンや家電機器などでもAtomプロセッサを広くアピールしていくことになる。