日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は2月23日、ソフトウェア開発技術基盤「Jazz」に準拠した、ソフトウェア開発ツール群「Rational」の新製品「Rational Team Concert V.1.0.1.1」「Rational Requirements Composer V1.0」「Rational Quality Manager V1.0」を発表した。いずれも日本語版で、米国ではすでにリリースされている。Rational Team Concert とRational Team Concert は3月1日より、Rational Requirements Composer は3月11日より、販売が開始される予定だ。

Jazzは、同社が2006年6月から策定に取り組んできた、ソフトウェア開発における品質と効率の向上を目的に、開発者だけでなく、プロジェクトマネージャーや経営者層も含めたコラボレーションを実現するための開発プラットフォーム。

日本アイ・ビー・エム 理事 ソフトウェア事業 Rational事業部長 渡辺公成氏

日本IBMで理事 ソフトウェア事業 Rational事業部長を務める渡辺公成氏は、「Rational製品のプラットフォームは、開発者の生産性に主眼を置いた"Eclipse"からチームのコラボレーションに主眼を置いた"Jazz"にシフトした」と、同製品の戦略について述べた。同氏によると、営業部門と異なり利益を数字で示すことがないシステム開発部門は企業のトップから"コスト部門"と見られがちなので、システム開発がビジネスに貢献している状況を"見える化"する必要があり、Rationalでは次のフェーズとしてその実現を目指しているという。

Rationalの製品戦略

Rational Team Concertは構成管理、変更管理、ビルド管理が統合されたコラボレーションのためのツールだ。プロジェクトの進捗やメンバーの状況などを自動収集してダッシュボードによってリアルタイムに表示する。コラボレーションのための機能として、Wikiやチャットを備えている。IBMが自社の顧客を対象に行った調査「IBMカスタマーサーベイ」では、チーム開発の生産性を50%向上したという回答も得られているという。

Rational Requirements Composerは、要求定義を実施・管理するためのツールだ。これまで、Rational製品において要求定義を管理するためのツールは提供していたが、要求定義のためのツールはなかった。同ツールでは、明確になっていないユーザーの要求を視覚的なイメージで管理し定義することで、要求定義の生産性向上を導く。

Rational Quality Managerは、テストを管理するためのツール。Webベースでテストの実施状況を一元管理し、テストの結果を追跡確認することを可能にする。

「今回発表した製品がオープンソースの開発ツールとどのような点で異なるのか」という記者の問いに対し、日本IBMのソフトウェア・エバンジェリストの玉川憲氏は「オープンソースのツールでも構成管理や変更管理など行えるが、開発者が自ら要素の紐づけを行わなければならない。また、オープンソースのツールではプロセスの管理を行うことができない」として、同社の製品はソフトウェアのライフサイクル全体を管理することができ、作業の効率化が図れる点で優位性があるとアピールした。

新製品の販売戦略として、Jazzの専任チームと検証センターが設けられる。検証センターは渋谷に設置され、3月に公開される予定。また、既存のRational製品を利用している顧客へのセールスが始められており、アジャイル開発に興味がある金融業の顧客と商談が進められているという。すでにJazzに対応した製品を開発しているベンダーは20社あり、年内に50社に伸ばしたいとのことだ。

3製品のライセンスは「サーバライセンス(3ユーザーライセンス付き)」と「クライアントライセンス(1クライアント当たり)」から構成される。上記のライセンスはユーザーが固定された「オーソライズド・ライセンス」であり、ユーザーが固定されず同時接続ユーザー数を対象とする「フローティングライセンス」もあるという。以下のライセンス価格はいずれもオーソライズド・ライセンスのもので税抜。

Rational Requirements ComposerはStandard Editionのみとなっており、サーバライセンスが500万5,000円、クライアントライセンスが78万6,500円となっている。Rational Quality Managerは、Standard Editionのサーバライセンスが286万円/クライアントライセンスが71万5,000円、Express Editionのサーバライセンスが100万1,000円/クライアントライセンスが71万5,000円となっている。Rational Team Concertの価格は以下の表のとおり。同製品のみ3ユーザー無料の「Express-c」が提供されている。

エディション サーバライセンス クライアントライセンス
Standard Edition 715万円 55万7,700円
Express Edition 85万8,000円 17万1,600円
Express-c 無料 17万1,600円