STMicroelectronicsは、低オン抵抗のSiパワーMOSFET「MDmesh」シリーズの新製品として「MDmesh V(ファイブ)」を発表した。これに併せて、同社日本法人であるSTマイクロエレクトロニクスも2月19日に記者発表を行った。

MDmesh Vは、650V定格でTO-220、I2PAK、TO-247といった小型パッケージに実装しながら、0.079Ωという低オン抵抗を達成している。低オン抵抗化により電力損失を低減し、高い電力密度が得られることから、小型、高効率が要求されるコンピュータ、通信機器などのスイッチング電源、HFバラストやHIDなど照明機器、テレビ、モニタなどのディスプレイ、さらに太陽光発電用コンバータなどへの応用が期待されている。

今回発表されたMDmesh Vデバイスは「STx42N65M5(33A)」「STx16N65M5(12A)」の2ファミリ。STP42N65M5は、TO-220パッケージに実装され、オン抵抗は0.079Ωとなっている。銅製品を含む同ファミリは、TO-220FP、I2PAK、TO-247、および表面実装型D2PAKを含むパッケージで提供される。

STx16N65M5(12A)ファミリはオン抵抗は0.299Ω。TO-220、TO-220FP、DAPA、IPAKのパッケージで提供される。いずれもすでに量産中で、単価は約1000個購入時に、STx42N65M5が約10.00ドル、STx16N65M5が約6.00ドル。

MDmeshシリーズではSi基板に深い溝(トレンチ)を形成し、そこにp-bodyを埋め込み、p-bodyを縦方向に拡張したスーパージャンクション構造を採用。それにより、ソース-ドレイン間の電圧降下を抑え、小型化しても優れた単位面積当たりの低オン抵抗を実現している。

プレナー型とMDmesh型の構造の違い

MDmesh Vでは製造プロセスを最適化することで、より深いドレインをより高精度に形成できるようになり、単位面積あたりオン抵抗は20mΩ/cm2を切るレベルに抑えられている。これは従来品である「MDmesh II」に比べて、35%以上の改善となる。

STMicroelectronicsのパワー半導体ロードマップ

また、オン状態での電力損失を低減するだけでなく、ゲート電荷量が抑えられるため、エネルギー効率に優れた高速スイッチングの実現や、低いRDS(ON) x Qg(性能指数)を得ることができる。さらに、MDmesh Vは、ターン・オフ波形が滑らかなため、ゲート制御が容易であると同時に、ターンオフ時のノイズ(EMI)が少く、フィルタ回路を簡素化でき、システムコストを抑制できるというメリットもある。

ブレークダウン電圧に関しても、夏の猛暑から冬季の零下数十度まで温度変化の激しい屋外での使用を想定して、他社で一般的に採用されている600Vより高い650Vに設定、安全のためのマージンを確保することができるようにしている。

このような特性から同社が行ったPFC回路による電力効率に関する評価試験では、MDmesh Vは他社最高性能製品に比べて約0.2%ポイントの電力効率が改善するとの結果が得られている。

他社製品とのエネルギー効率比較

同社では、MDmesh V パワーMOSFET(650V定格)製品の今後の展開として、太陽光発電システム向けにMax247パッケージで0.022Ω、TO-247パッケージで0.038Ωを実現する高電流定格デバイスの製品化を計画しており、2009年4月からサンプル出荷を開始する予定である。シリコンIGBTからの置き換えを狙う。

今後も、MDmesh Vにおいて内蔵ダイオードの高速化などの改良を進めるほか、2010~2011年をめどに、次世代品として10mΩ/cm2を下回る単位面積当たりオン抵抗を実現するMDmesh VIの開発、製品化を進める。さらに2011年以降にはSiC製品の投入も予定している。