日本アイ・ビー・エム 代表取締役社長 橋本孝之氏

日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)の代表取締役社長である橋本孝之氏は2月19日、報道関係者に向けて、2009年の方針について説明を行った。今年度の方針の目玉は、同社が提唱するコンセプト「Smarter Planet(デジタル・インフラと物理的インフラが一体化したインテリジェントな世界)」を実現することで、同社はその具現化に向けて、同日「Japan Business Solution Center」を大和事業所に開設した。

同氏は今年度、「礎-"次世代への礎を築く年に"」というテーマの下、3つのイニシアティブを実施していくと述べた。3つのイニシアティブは「自由闊達な企業文化の醸成」「顧客への価値創造をリード」「新規ビジネス拡大とパートナーシップ強化」だ。

日本IBMの2009年の事業方針

自由闊達な企業文化の醸成

同氏は「自由闊達な企業文化の醸成」を3つのイニシアティブの中で最も優先度が高いとして、「"顧客への価値提供"という当社のミッションを達成するには、当社の社員が元気でなければならないから」とその理由を説明した。その具体策として、役員と事業部長に自身の実践目標をイントラネットで表明させ、第1四半期が終了したら、評価をイントラネットに掲載する。「顧客第一」を実践した社員はオンライン上で評価し、記念品を授与する「Value Program」という仕組みもスタートしている。

顧客への価値創造のリード

「顧客への価値創造のリード」については、今日の不況に対する緊急オファリングの提供とSmarter Planetの推進の2本柱の下、取り組んでいく。緊急オファリングは、日本IBMとアイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービスが共同で行うもので、「ITコスト緊急削減」「新興市場へのシフトに向けた海外拠点配置の最適化」などに関するコンサルティングとサービスが提供される。同サービスに対する企業の引きは強く、「2月17日に発表してから2日しかたっていないが、すでに成約に至っている」(橋本氏)という。

また、同氏は「これまで企業は株主至上主義で走ってきたが、今日の世界同時不況でその価値観が崩れた。これからは新しい価値観が必要になる。それが"Smarter Planet"だ」と、同社がSmarter Planetというコンセプトを掲げている理由を説明した。

「今、さまざまなモノがデジタル化され、インターネットで相互に接続し、インテリジェントになりつつあるが、交通、環境、エネルギーなど、世の中にはまだまだ解決すべき非効率が存在している。当社は、そうした問題を、デジタル・インフラと物理的インフラが一体化した賢い世界を作り出すことで解決していきたい」(橋本氏)

Smarter Planetの具体的な推進策としては、昨年新設された未来価値創造事業にグリーンとクラウドコンピューティングのチームを統合するとともに、3月2日付けで大和事業所に「Japan Business Solution Center」を開設する。同センターは、晴海に設立された「IBMクラウド・コンピューティング」と連携して、Smarter Planetの要素技術や事例を紹介するとのこと。

日本IBMの「Smarter Planet」への取り組み

新規ビジネス拡大とパートナーシップの拡大

同社は昨年、中堅企業向けの営業体制を、1,000人未満の企業をカバーするグループ、1,000人以上1万人未満の企業の新規ビジネスを行うグループ、1,000人以上1万人未満の企業の既存ビジネスを行うグループによる構成にした。この体制を中部・関西エリアにも拡大していくという。また、GTS(グローバル・テクノロジー・サービス)事業に、30名から成る新規アウトソーシング契約の専門部隊が新設された。

同氏は昨今の不況について、「4月以降、企業は"コストをどのくらいカットして、それを実現するために何をすべきか"といった不況への対策を打ち出してくるだろう。その時こそ、当社としては提案もしやすくなる」と、売上・利益に対して前向きな考えを持っていることを明らかにした。企業に提案をする際には、先の緊急オファリングのようなコスト削減に有効な「引き算」のソリューションと顧客の価値創造に寄与する「足し算」のソリューションを組み合わせた形で行っていきたいという。