2009年1月、年明け早々からネット事件簿史上に残る"まさか"の情報流出事件が発覚した。今回のネット事件簿は何を置いてもこれが断トツのトップ。もちろん他にもいろいろ起こっていたわけだが、ネット界の異様な盛り上がりを差し引いても他の事件が霞むほどだった。いや、ほんとに素でビックリしましたよ。

2009年1月のネット事件簿 Top10(※)

順位 記事 掲載日
1位 IPA職員がまさかの情報流出 - 「Share」の可能性も「現在本人に確認中」 1/5
2位 IPA職員の情報流出で緊急会見 - 前職時代の取引先企業情報など1万件超 1/6
3位 mixiで池袋殺人予告、理由は「なんだかむしゃくしゃ」少年を逮捕 - 警視庁 1/28
4位 IPA職員の懲戒処分を発表 - 私物PCからの大量情報流出問題で 1/19
5位 児童ポルノサーバ「うな鯖」管理人の39歳男を現行犯逮捕 - 奈良県警 1/7
6位 米カード処理会社のシステムに不正侵入 - 情報流出では過去最大規模か 1/21
7位 あわや全データ消去、Fannie Maeから解雇されたエンジニアが報復 1/30
8位 「ヤフーに爆弾しかけた」と投稿……逮捕、大阪府の大学生男 - 警視庁 1/8
9位 2ちゃんねるで朝青龍の殺害予告、29歳無職男スピード逮捕 - 警視庁 1/15
10位 神奈川県の高校生情報、全データ11万人分の流出が判明 - 当初発表から増加 1/8
※ 各記事の掲載日(1/1~1/31)から1週間のアクセス数をもとにしています。

起こさないことが第一。でも起こってしまったら……

教員、警察官、政治家など、公の立場にある人物の不正や犯罪に対して、世の中の目は厳しい。人々の手本となる立場でありながら……という失望と、この人の給与に税金が使われていると考えると……という憤りが入り交じり、報じるメディアの論調にも遠慮はない。

ネット事件簿でほぼ"常連"となっている情報流出系事件の中でも、今回の事件は断トツのアクセス数を記録。「情報社会システムの安寧と健全な発展」への貢献を使命とする、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の職員が、暴露ウイルス感染により私物のPCから情報を流出させてしまったのだ。後に開かれた会見を報じた記事も2位、4位にランクインしている。情報セキュリティに対する啓発や情報提供を行うべき組織の職員がこうした事件を起こしたことに対し、IPA側からも「非常に遺憾だし、情けない」という発言があったそうだ。

これに対する批判はすでに方々で出尽くしていると思うので、今回は事件発覚後のIPAの対応を評価してみよう。参考にするのはIPAが発行している冊子「情報漏えい発生時の対応ポイント集」だ。この冊子では、紛失・盗難、誤送信、内部犯行など、漏えいのタイプ別に対応のポイントがまとめられている。

この中の「Winny/Shere等への漏えいの場合の対応」を見ると、(1)発覚および報告の後、(2)初動対応として、いつどこでなぜ流出が発生したのかなどの事実関係を整理すること、インターネットからPCを切り離し、調査のため極力使用時の状態のまま提出させることなどが挙げられている。並行して漏えいの内容・範囲・時期等の(3)調査を行い、被害の重要度を判定。その後関係者や監督省庁へ(4)通知・報告・公表等を行うとしているが、公表によりダウンロードを増加させる懸念がある場合は「しばらくの間公表を控える」という考え方も挙げている。この後、二次被害防止等の(5)抑制措置と復旧、再発防止策等の(6)事後対応までが基本ステップとされている。

今回の会見やリリースの内容を見ると、早い段階で事実関係が明らかにされており、流出した内容・範囲・時期も発表されたことで、情報を開示する姿勢が伺える。状況から見てダウンロード増加の恐れは高いと思われたが、流出した情報の項目については発言を避けるなど、被害の拡大防止への対応も明確だ。最終的に、職員の懲戒処分(甘いという声もあるが)、私物PCでのファイル交換ソフト使用禁止や研修の実施等の再発防止策も発表された。

事件そのものに対する批判は免れようもないが、一連の対応については同冊子で挙げる"原則"通りに速やかに行われたと言えるのではないだろうか。とは言っても、何よりも日頃から正しい対策を行い、事件を起こさないことが肝要だ。

"なんだかむしゃくしゃ犯罪"予防に睡眠、飲食、カルシウムを

上位を独占したIPA関連の記事に割って入ったのが、3位の殺人予告事件。今回はあきれるを通り越して脱力だ。よりによってmixiとは……マイミクの前で何かを訴える自分を表現したかったのだろうか。

逮捕された少年は「なんだかむしゃくしゃして思いつくまま書き込んだ」などと供述しているそうだが、まるで昔の刑事ドラマの放火犯が言うセリフだ。火事にならないだけまだマシか? いや、人間なら誰しも「なんだかむしゃくしゃ」な気分とどこかで付き合わなくてはならないのだ。思いつくまま衝動に身を任せていては、社会が成り立たない。

ネットマイルが社会人を対象に実施したアンケートでは、職場でのストレスを「感じる」という回答が8割を超える結果となっている。その原因(複数回答)としては性別・年代別共通で「上司・先輩との関係」がトップ。次いで多いのは「自分の将来」「仕事の負荷」「給与・収入」などとなっている。しかし無職の19歳では、こうした具体的な原因ではなく"世の中全てに腹が立つ"ような若さ故のやり場のない憤りがストレスになっているのかもしれない。理由がわからない、正体が見えないというのは一層不安をそそるものだ。まずはそれをストレスだと認識することが、解消・発散への第一歩だ。

同アンケートではストレス解消法として「睡眠をとる」を挙げた人が突出して多かった。2位以降は男女差が大きく、男性では「お酒を飲む」、女性では「美味しいものを食べる」となっている。また、gooランキングの「とっておきのストレス解消法ランキング」でも1位は「たくさん寝る」。続いて「たくさん食べる」「衝動買いをする/散財をする」「お酒を飲む」などが挙がっている。

この他ネット上で確認できたいくつかのアンケートでも、ストレス解消に「眠る」という回答が多かった。寝るのは意外に効果が高いようだ。また、意識的に心をリフレッシュしたり、カルシウムを摂取することも大切だ。"なんだかむしゃくしゃ"が凶暴化する前に処理する術を身につけることが、ストレスフルな現代社会では必要とされているのだ。

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