日立システムアンドサービス(日立システム)が新春恒例のイベントとして主催する、ソリューションベンダ対抗のカルタ大会が今年も都内にある同社本社で開催された。

同社のカルタ大会は、セキュリティを題材にした格言を盛り込んだ、オリジナルのカルタを使用するのが特徴。4度目の開催となる今回は、「今日からはじめるセキュリティ」をテーマに、いろは歌の仮名音で始まる格言48枚のカルタで構成される「セキュリティいろはかるた」が新たに制作された。セキュリティ分野をテーマに幅広い研究・教育・啓蒙活動を展開している慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の武田圭史氏が監修を、人気ゲーム『パラッパラッパー』などのシナリオを手がけたゲームデザイナーで編集者の伊藤ガビン氏が企画・構成を担当した。

翔泳社またはAmazonで販売されている『セキュリティいろはかるた』。価格は1,800円也

読み札と取り札の一部

「セキュリティいろはかるた」の監修を務めた、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の武田圭史氏

今回のカルタ大会の開催にあたり、武田氏は「セキュリティ講話」と題して講演。2006年以降の国内のセキュリティ動向を振り返りながら、「以前はうっかりミスによる情報漏えい事故が多かった。しかし、2007年くらいから不正アクセスが増加し、闇の売買市場がある程度定着してきたことを裏付けている。さらに、2008年はメジャーなサイトが狙われるケースが多い。昔はマイナーなサイトが狙われていたが、ウイルスをばら撒く手段としてアクセスが多いサイトが注目されているというのが最近の傾向だ」と解説した。加えて、2008年はウイルス感染が増えたことにも触れ、「USB経由の感染が特に増えた」とし、「ウィンドウズの自動実行を止めることが手っ取り早い対策になる」と説明した。

今回制作されたカルタは、48句のうち「け」「ふ」「こ」「え」「て」の5句は、ブログ上でコンテストを実施し、2,000件を超える一般応募の中から採用されたという。武田氏はその中でもグランプリ受賞作である「敵は煩悩時にあり」という句を紹介。「誘惑に駆られるようなサイトにアクセスするときには、それを悪用しようとする人が必ずいることを心にとどめておくべき。人間の煩悩がある限り、それをついた攻撃があるもの」と解説した。また、自らのお気に入りとして「"漏らしました" その一言をいう勇気」という句を紹介しながら、「悪い情報を早く伝えるべきことは伝えることが大切」と力説した。

また、いろは歌に隠されているとされる暗号「とかなくてしす」を引き合いに、「セキュリティを怠ると"クビ"が飛んでしまう="とかなくてしす(罪がなくて死んでしまう)"」と、セキュリティ対策の重大さを冗談交じりに訴えた。

このほか、カルタの制作メンバーも紹介され、「通常の遊び方に加え、絵札の裏に書かれた"キーワード"を使って遊ぶ"リバーシブルかるた"などのローカルルールも盛り込んだ」(企画・構成担当の伊藤氏)など、制作秘話なども披露された。

カルタ大会は、3人1組で対戦するトーナメント形式で実施。大会は二部構成で、午前中に行われた第一部では、日立システムの2009年度新卒内定者の4チームと現役社員の4チームが参加。午後に行われた第二部には、ソリューションベンダなど8チームが参加しての対抗戦が繰り広げられた。

ソリューションベンダなど計8チームがトーナメント形式で対戦した第二部

白熱する対戦の様子(第二部)

第二部優勝チームの新木場カルタ同好会弐(NECソフト)

「SE業界一手の速い男として今年も頑張りたい」と話した、第二部個人1位のNECソフトの岩田有二氏

「カルタでSE業界を明るくしていきたい」と挨拶する日立システム 人財開発部 部長 石川拓夫氏

第二部に参加したのは、日立システムをはじめ、NECソフト、日立ソフト、PFU、東京計器インフォメーションシステム、TISのベンダ5社に加え、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)、カルタ制作チームの計8チーム。競技中は、時間を追うごとに各チームともにヒートアップ。熱中した参加者が思わず畳の上に倒れこんでしまう一幕や、空中をカルタが舞う場面も見られた。そんな中、決勝戦に駒を進めたのは、新木場カルタ同好会 弐(NECソフト)とHappy Hacking研究所(PFU)の2チーム。対戦の結果、新木場カルタ同好会 弐が見事接戦を制し、昨年は3位に終わった屈辱を晴らした。また、個人賞にはNECソフトの岩田有二さんが輝いた。

カルタ大会を主催する、日立システムの人財開発部部長 石川拓夫氏は「カルタをやりながら明るい情報を発信できれば、SE業界もわかりやすいものになるのではないか。不景気で厳しい世の中ではあるが、来年も他の予算を削ってでもぜひカルタ大会を実施したい」と語った。