日立製作所は2月12日、総務省の委託研究「電波資源拡大のための研究開発」を基に、60GHz帯ミリ波無線伝送システムの全周波数帯域(57~66GHz)で用いることができるシリコンゲルマニウム(SiGe)ヘテロ接合バイポーラトランジスタを用いた発振器の試作に成功したことを発表した。

ミリ波無線伝送は、60GHzを中心に7GHz幅の周波数帯(日本・欧州:59~66GHz、北米:57~64GHz)が認可されている。こうした国内外の周波数すべてをカバーするためには、構成部品である高周波発振器として、認可周波数の範囲を上回る12GHz幅以上の周波数範囲をカバーできる発振性能が要求される。しかし、従来の発振器では、広い周波数可変範囲で動作させると発振器の出力信号強度が低下し、これを補償するために消費電力が増大するという問題があった。

同社では、60GHz帯ミリ波無線伝送システムに求められる広い周波数可変範囲で動作し、かつ低消費電力で大きな信号出力を可能とする発振器回路技術「ループグラウンド伝送線路技術」を開発することで、この問題を解決した。

同技術は、出力回路に基本発振波の波長の入力信号線路と2次高調波の波長の出力グラウンド線路で構成するループ形状のトランスフォーマーを導入し、出力グラウンド線路から2次高調波信号を取り出すことで周波数可変範囲を拡大できるという回路技術。

同技術により、信号線路の寄生容量の影響を低減することが可能となり、伝送損失を少なくして信号を効率良く出力できるようになる。また、同回路は受動素子のみで構成されているため、低消費電力でありながら大きな出力信号強度と広い周波数可変範囲を同時に得られる発振器を実現することが可能となった。

なお、同社では同技術の有効性を実証するため、0.18μm SiGe BiCMOSプロセスを用いて発振器を試作。動作検証を行ったところ、52GHzを中心に周波数可変範囲14GHz幅(45~59GHz)、信号出力強度1.5dBm、消費電力132mWでの動作を確認した。また、発振器の総合性能評価指標を用いて実測性能の評価を行なったところ、総合評価値-189.6dBという結果が得られたという。