三菱電機は2月10日、組込機器向の操作用表示器に組み込める2種類のGUI描画処理用IPコアを開発したことを発表した。これにより、処理能力の低い組込機器でも、PC画面のような高い視認性とすばやい反応を実現できるようになるという。

開発されたのは、高品質な文字表示に対応した独自開発の描画処理用IPコア「Saffron」および独自の描画アルゴリズムにより、美しい表示品質を実現するベクターグラフィックスを高速処理することが可能なIPコア「Sesamicro」の」2つ。

Saffronは、2005年に同社の米国研究所(Mitsubishi Electric Research Lab:MERL)が開発した文字表示アルゴリズムで、Adobe SystemsのFlashに搭載されているほか、Monotype Imagingへライセンス供与されるなどの実績を有している。今回はそれをハードウェアIPコア化したもので、これにより、従来、組込機器で用いられていたビットマップフォントから、アウトラインフォントへの変更が可能となる。また、メモリ容量をアウトラインフォント比で1/4に削減できるストロークフォントにも対応している。

「Saffron」ハードウェアIPコアの概要

また、描画速度は、XilinxのFPGA「Spartan-3」(66MHz動作)を用いた場合で、1文字サイズ48×48画素で毎秒8万文字の描画が可能なほか、文字の拡大縮小やぼやけ、白抜き、回転などを行うことも可能だ。

三菱電機 情報技術総合研究所 表示システム技術部長の田中敦氏

この高速処理については、「文字をタイルのようにして分割して部分的な描画を行うことで、外部メモリを用いず、回路内部のキャッシュのみで処理することで高速化を実現した」(同社 情報技術総合研究所 表示システム技術部長である田中敦氏)という。

一方のSesamicroは、ビットマップ画像では拡大などを行った場合にジャギーが目立ち画像が粗くなるのを、ベクターグラフィックス方式を用いることで、より滑らかな表示を実現する。「IPコア側の回路で処理を行うので、CPUの負担はほとんどない。そのため、66MHz程度のCPUでも、2GHzの汎用CPUで処理を行った場合に比べてより高速な描画が可能となった」(同)とする。

「Sesamicro」ハードウェアIPコアの概要

アプリケーション例としてユニバーサルGUIが紹介された

「理論的にはフルHDのパネルに表示されるGUIでも60fpsでの表示が可能」(同)としており、将来にわたって活用できるとしている。

2種類のIPコアのサイズは、いずれも「最少で10万ゲート程度」(同)としている。ゲート数を抑えたことにより、低価格FPGAや組込機器用カスタムLSIへの搭載も可能となる。なお、最少という表現は、現在、オープンなベクターグラフィックスAPI仕様である"OpenVG"への対応などを進めており、こうした要件などが入ってくると、ゲート数が増えるため。ただし、それでも既存の組込用のグラフィックス処理用IPと比較すると1桁程度小さいゲート数で回路を実現できるという。

アルゴリズムの最適化などにより、回路規模の小型化を実現

なお、同社では、まずは社内での活用を進めていくとしており、鉄道用表示器やFA表示器、車載表示器、AV機器などへ適用していきたいとしており、「2009年度中には、何らかの機器に組み込めれば」(同)とし、各事業部との調整を進めていくとした。

各種フォント(左)と文字回転時の画像(右)

ユニバーサルGUIのデモ(左の画面から、瞬時に右のような画面に切り替えることが可能)

今回使用されたデモボード(真ん中の大きいチップがSpartan-3)

動画
文字を変化させた際の映像(wmv形式 500KB 8秒)