日本ヒューレット・パッカードは2月9日、運用管理ソフトウェア「HP Insight Dynamics - VSE 4.1」「HP Insight Orchestration」「HP Insight Recovery」、およびラックマウント型サーバ「HP SE2120」、無償アセスメントサービスの新版「アダプティブ・インフラストラクチャ成熟度モデル Ver.2」を発表した。これらはいずれも、同社のクラウドコンピューティング向けポートフォリオの一翼を担う製品/サービスとして位置づけられている。
運用の効率化を実現する自動化ソフトウェア3製品
HP Insight Dynamics - VSE 4.1、HP Insight Orchestration、HP Insight Recoveryは、クラウドコンピューティング基盤の最適化に向けて必要な「自動化」を実現する運用管理ソフトウェアだ。
これらのうち、HP Insight Dynamics - VSE(Virtual Server Environment)は、複数の物理サーバから成るシステム環境でのプロビジョニングを実現する統合管理ソフトウェア。物理サーバだけでなく仮想サーバも管理対象に含めることができる。
新版では、新たにHP Integrityブレードサーバに対応。ハイパーバイザーについても、VMWare ESXに加えて、Microsoft Windows Server 2008 Hyper-V、VMWare ESXiに対応するなど、サポート範囲を広げている。
また、HP Insight Orchestrationは、HP Insight Dynamics - VSEを拡張する製品。GUI画面でシステム構成をテンプレート化したうえで、自動的にプロビジョニングすることができる。
HP Insight Orchestrationでは、システム構成を可視化することができるため、新システム構築時のリソース利用申請/承認が行いやすくなる。また、承認を行うとすぐにプロビジョニングが行われ、必要なシステム環境が自動的に構築されるうえ、標準構成のテンプレートを用意しておけるため、システム構築作業の効率化が図れるという利点もある。
HP Insight Orchestrationの運用の流れ |
HP Insight Orchestrationのデモ。左のペインからパーツをドラッグ&ドロップしてシステム構成図を描く |
システム構成を決めた後は、どの物理サーバのリソースを割り当てるかを設定する |
システム構成を決めた後、申請を行い、管理者が承認すると、プロビジョニングが実行される |
一方、HP Insight Recoveryは、複数のデータセンター間においてHP Insight Dynamics - VSEによるリソース共有を可能にする製品。物理/仮想リソースのデータレプリケーションも可能で、ディザスタリカバリ環境を容易に構築/管理することができる。
こうした製品によりHPでは、大量の物理サーバを利用するクラウドコンピューティング基盤を提供する企業を中心に、複雑化する運用管理の効率化を後押しする構え。
x86サーバ日本専用モデル
国内のクラウドプレイヤーを意識して新たにリリースされるラックマウント型サーバが「HP SE2120」である。同サーバは、日本の顧客に特有のニーズに応えるために誕生したという。
日本HP、エンタープライズ ストレージ サーバ事業統括 ISSビジネス本部 ビジネスデベロップメント部 部長 正田三四郎氏は、国内の大手サービスプロバイダーに対する調査結果を挙げ、「米国とは異なり、『フリー系Linuxサポート』『1Uサーバの高密度なラック型サーバ』『(パフォーマンス比ではなく)絶対的な低消費電力』『独立型電源ユニット』『単体での可用性/メンテナンス性』といった独特のニーズを持っている」と説明する。
こうした要件を満たすために、HP SE2120では、1Uラックマウント型筐体に2台のサーバノードを標準搭載する高密度設計を採用。各ノードには、250GB SATA×2もしくは148GB SAS×2のホットプラグイン対応ハードディスクや、ギガビットイーサネットNICポート×2、IPMI 2.0互換管理ポート×1のほか、電源装置も個別に搭載されている。
また、フリーのLinuxサポートという点では、Windows、Red Hatに加えてCentOSの動作検証を実施。同OSの有償サポートも開始する。
さらに、消費電力についても、同社が従来から提供している1Uサーバ「HP ProLiant DL360G5」が約186~224Wなのに対し、HP SE2120は約96~140Wと、1ノード当たり48~38%の削減を実現しているという。
HP SE2120は3つのモデルが用意される。詳細は以下のとおり。
無償アセスメントサービスをバージョンアップ
以上のような新製品リリースに併せて、HPは無償アセスメントサービス「アダプティブ・インフラストラクチャ成熟度モデル」をVer.2へとバージョンアップさせている。
同サービスは、同社が提唱するITインフラ向けコンセプト「アダプティブ・インフラストラクチャ」を実現するためのアセスメントサービス。アダプティブ・インフラストラクチャとは、「リソースを気にすることなく、必要とするサービスを必要なときに利用できるサービスセントリックコンピューティングを実現するシステム環境」で、アダプティブ・インフラストラクチャ成熟度モデルでは、「テクノロジ&インフラストラクチャ」「カルチャー&ITスタッフ」などさまざまな領域で5つのステージを定義しており、現在の状態を定量的に評価したうえで、目標とする状態とそれに近づくためのステップを具体的に示すことができる。
Ver.2では、仮想化、自動化など、クラウドコンピューティング向けの評価項目を追加したほか、グリーンITに対応した拡張も施されている。
なお、HPでは、クラウドコンピューティングの実現をサポートする社内体制を敷くことも発表。「NGDCイニシアティブ」と呼ばれる全社横断のタスクチームを組織し、統合されたソリューションを提供していくという。