矢野経済研究所は、2008年10月-2009年1月にかけて、国内ERPパッケージベンダー23社を対象に、ERP市場動向に関する調査を行い、「ERP市場動向に関する調査結果 2009」として発表した。
それによれば、2008年の市場規模は対前年比7.1%増の1,255億3,000万円だったが、当面景気が好転する兆しは見られず、ERP投資の規模縮小や凍結、先送りなどが増加すると推測されるため、2009年は対前年比2.0%減の1,230億円となり、5年ぶりのマイナス成長となる見込みだ。
2009年の市場を企業規模別に見ると、大手企業(年商1,000億円以上)および中小企業(年商100億円未満)がERPへの投資を縮小するとみられ、大手企業ではこれまでERP市場を牽引してきた自動車や電子・電子機器など日本の主要産業が打撃を受けている影響が大きく、中小企業は経営環境悪化によって投資余力を失っているという。
一方で、中堅企業(年商100億-500億円)向けの市場は比較的堅調に推移する見込みだ。2009年の受注動向の影響から2010年もマイナス基調が続く見込みであり、市場規模は対前年比0.8%減の1,220億円にとどまるもようだが、環境の変化への追随やコンプライアンスへの対応など市場を底支えするニーズは堅調であり、2011年以降は再びプラス成長に転じると矢野経済研究所は予測している。
ERP市場では可視化(見える化)と内部統制/コンプライアンスがキーワードとして浮上しているという。
可視化は2009年のERPベンダーの販売戦略に頻出しており、先行き不透明な経営環境の中で改めて注目されている。具体的なソリューションとしては、BI(Business Intelligence)やEPM(Enterprise Performance Management)から、情報をグラフで表示する簡易なフロントエンドツールまでレベルは多様ながら、2008年には新機能や新製品が相次いでリリースされた。ベンダー各社は可視化をキーワードにユーザー企業の戦略的な投資を促す狙いがあると矢野経済研究所はみている。
内部統制/コンプライアンスについては、J-SOX法対応に限定せず本来的な意味でのコンプライアンスに対して上場・非上場の区分や企業規模を問わず関心が高まっているという。その結果、ITガバナンスの実施やグループコンプライアンスを目的に企業におけるIT基盤としてERPが採用され市場を底支えする要因になっている。また、金融庁が日本での導入について本格的な検討に入ると発表したIFRS(国際財務報告基準)が適用されると企業が会計システムの変更を迫られるため、ERP市場の底上げに繋がると矢野経済研究所は予測する。