『Adobe Premiere Pro CS4』の新機能に関する話に続き、米Adobe Dynamic Media Product ManagementのシニアディレクターであるSimon Hayhurst氏に、同社のFlash配信環境である「Flash Media Server 3.5」に関して話を聞いた。

マルチビットレートでいつでもなめらかな映像を

「Adobe Flash Media Interactive Server 3.5」。「Adobe Flash Media Streaming Server 3.5」などと共に、アドビの動画配信戦略の中核となる製品

最初にHayhurst氏は、英BBC放送(BBC)がネット配信における環境を、Windows MediaからFlashに変更した事例を紹介してくれた。この移行を行った週は、閲覧者が250%も増加したほか、視聴時間も従来の平均5分から25分に拡大したという。BBC放送の映像配信は、英国のトラフィック全体の20%を占めるそうだ。そのほかにも、米Walt DisneyもFlashを使った映画の配信に乗り出しており、Flashの著作権保護機能を生かしたサービスも拡大しているという。こうしたFlash配信を支える「Flash Media Server 3.5」の新機能についてHayhurst氏は、第一にマルチビットレートへの対応を挙げる。

映像配信につきものの課題であるビットレートの問題では、たとえば1.5Mbpsの映像ではユーザーに素晴らしい体験を提供できる。ただし、それには、「帯域さえ確保できていれば」(Hayhurst氏)という課題が残っている。300kbpsに抑えると、ほとんどのユーザーが視聴可能だが、解像度や映像のクオリティが犠牲となってしまうのだ。

それに対しマルチビットレートでは、配信状況などに応じて複数のビットレートで配信できる点が特徴だ。映像へのアクセスが急増し、映像の再生がぎこちなくなってしまうと視聴者は離れてしまうが、そういうときはビットレートを落としてなめらかに動く映像を見せることで、視聴者がそのまま視聴してくれる可能性が高くなる。こうしたマルチビットレートの提供を、誰でも可能となるのがFlash Media Server 3.5の特徴だという。

BBC放送やDisneyなどのようにFlashの配信は拡大しているが、現在、Flash Media Serverを選ぶ理由は何だろうか。Hayhurst氏は2つの理由を挙げる。まず「映像配信においてユーザーに対して、より魅力的な体験を提供することでサービスの成功率が高まる」とHayhurst氏は言う。現在のようにビジネス状況が厳しくなった状況では、「今まで以上に体験が重要視され、魅力的な体験を提供できるFlashを選ぶ理由がより大きくなる」(同)という。それを数値でも証明したのがBBC放送。ユーザー数が従来の3倍になり、閲覧数が5倍になるとすると、全体の視聴時間は15倍となる計算だ。サービスが広告ベースの場合、不況で広告料が下がっている現在の状況では、15倍という増加は大きなインパクトがあるといえるだろう。もう1点は前述のマルチビットレートだという。ユーザーに対しては質の高い体験を提供しつつ、ネットワーク帯域の使い過ぎを防げるため、運用コストを下げることができる。「質が高い体験を提供すれば売り上げが上がり、コストが下げられれば利益はさらに上がる」とHayhurst氏は言う。

「Adobe Premiere Pro CS4」に続き、「Flash Media Server 3.5」について語る米Adobe、Dynamic Media Product Management シニアディレクター・Simon Hayhurst氏

アドビの顧客からは、これまで「CS4」も含めてクリエイティブな観点から新製品を見られることが多かったというが、最近では「今のビジネスにどう役に立つのか?」という質問が増えているとHayhurst氏は言う。Flash Media Server 3.5では、こうした顧客の声に応えることができるのだという。経済状態が好調な時期に開発は始まったが、「現在の不況の世の中に対しても、質の高いユーザー体験の提供とコスト削減というふたつの利点が導入の理由になるはずです」とHayhurst氏はFlash Media Server 3.5を力強くアピールしていた。