米Adobe Systemsのプロ向けツール「Adobe CS4」シリーズが昨年12月より日本でも発売された。プロのクリエイター必携のツールだが、その最新シリーズでは、どういった機能が強化されたのだろうか。米AdobeのDynamic Media Product Management シニアディレクター・Simon Hayhurst氏に、ビデオ編集ツール「Adobe Premiere Pro CS4」を中心に、訊いた。

動画から音声を認識しテキスト化する「スピーチ検索」

「Adobe Premiere Pro CS4」について語ってくれた米Adobe、Dynamic Media Product Management シニアディレクター・Simon Hayhurst氏

Hayhurst氏によれば、Premiere Pro CS4は、特にビデオの将来性を見据えて開発したという。その未来とは、「検索が可能なビデオ」(Hayhurst氏)だ。なかでも、「スピーチ検索」機能は、Premiere Pro CS4の目玉のひとつといえる。スピーチ検索は、動画から音声を認識してそれをテキストとして描き出す機能だ。言葉にはそれぞれタイムコードが指定されるので、動画とともに言葉の内容が台本のように表示され、シーンに合わせて文字も移動する。その中から特定の言葉を選ぶと、動画もその言葉を話しているシーンに飛ぶ。この機能は英語以外に日本語にも対応している。

Hayhurst氏はデモで、オバマ米次期大統領の1時間30分の演説から「太陽エネルギー」に関する話題を検索して見せたくれた。演説の内容を知らない場合、従来なら1時間30分の演説をずっと聴いていなければならないが、スピーチ検索であれば、検索窓に「solar(太陽)」と入力するだけで「solar」の言葉がピックアップされ、その周辺の「台本」(トランスクリプト)を読むことで演説内容が把握できる。必要な部分が見つかったら、「solar」の文字をクリックすることで、その演説を聴くことができ、必要な部分だけをピックアップすることができる。トランスクリプトだけでなく、メタデータやテキストスクリプトの検索も行える。こうした検索機能の充実によって「ワークフローを非常に加速する」とHayhurst氏は言う。こうして作成していったクリップを最終的に作成する際、トランスクリプトはXMP(Extensible Metadata Platform)としてクリップと一緒に保存されるので、新規クリップ作成後の検索にも対応できる。XMPといえば、従来は「Photoshop」などで使われていた画像用のメタデータだったが、これをビデオでも利用できるようになったわけだ。

Premiere Pro CS4はCS4シリーズの製品のコアとして、他製品との連携機能が強化されている点も挙げられるだろう。Hayhurst氏は、作成したクリップをPremiereから「Adobe SoundBooth CS4」でオーディオ編集したり、トランスクリプトのタイムラインを生かした形で「After Effects CS4」へ取り込んだりと、最終的な出力までのワークフローが迅速に行える点をCS4の利点としてHayhurst氏は強調する。

3年で3倍に伸びた動画編集ツールの売り上げ

「Adobe Premiere Pro」は動画編集における核となるツールだ

もうひとつ、Hayhurst氏が強調するのが「テープレスのワークフロー」についての新機能だ。Premiere Pro CS4では、従来のカセットを使ったビデオカメラだけでなく、フラッシュメモリやHDDなどを使ったデジタルビデオカメラへの対応を強化し、AVCHDにもネイティブ対応。もちろんプロの現場で使われるレッドカメラにも対応しており、取り込んだ映像をトランスコードすることなく、そのままの形で編集することが可能になっている。そのまま編集できるので、映像のメタデータが失われることもなく、ビデオに撮影されたそのままのクオリティの映像を編集できるので画質の劣化もない。これをHayhurst氏は、「レンズの近くにユーザーをお連れする」と表現していた。充実したテープレスカメラへの対応によって、現在、映画業界ではジェームズ・キャメロン監督、放送業界では英BBC放送(BBC)などが利用。米国のゲームメーカーElectoronic ArtsやミュージシャンのマドンナなどもPremiere Proを使っているとのこと。3年前と比べ、動画分野でのAdobe製品の売り上げは3倍にも伸びているという。

また、CS4の新機能でクリエイターの競争力の強化も図れるとHayhurst氏は言う。例えばSoundBoothでは、1クリックで音声のノーマライズが可能で、会話している人物の声の音量調整が簡単に行える。これにより編集作業時間が大幅に短縮され、それ以外の作業に時間を当ててクオリティを高めたり、作業量の軽減によるコストダウンなどが可能になるという。

Hayhurst氏は、「Premiere Pro CS4は、クリエイターの映像編集の方法に関わる様々な部分を革新ができている点がエキサイティングなツールです」と語った。