日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は2月3日、都内で「クラウド・コンピューティング・セミナー 2009」を開催し、同社のクラウドコンピューティングに対する戦略、国内外のクラウドコンピューティングの導入事例などを紹介した。米IBMソフトウェアグループ クラウド・コンピューティング・ストラテジック・イニシアチブ ダイレクターのリサ・ヌーン氏は、海外の事例をもとにクラウドコンピューティング導入のノウハウについて語った。
ヌーン氏は、同社がクラウドに関するコンサルティングを行う際、顧客に対し、自社にクラウドを導入したほうがよいかどうかを判断させるための質問をしていると説明した。
例えば、管理者1人が管理するサーバの台数が100台より少ない場合、クラウドを導入すれば1人の管理者が管理するサーバの台数を1,000台にも増やすことが可能だという。また、テスト環境の構築に数日以上かかっている場合、クラウドによってテスト環境にかかる時間を数分にまで短縮することが可能だという。実際、同社では「RC2」という研究者専用のクラウドが利用されており、そこではテスト環境を10分で構築することができる。
クラウドを導入する目的は大きく「プロビジョニング」「ワークロード管理」「サービスデリバリプラットフォーム(エンドユーザーによるセルフサービスのための環境)」に分けられるという。プロビジョニングを目的にクラウドを導入した企業として、リテールバンクが紹介された。
このリテールバンクがクラウドを導入しようとした理由は、「サーバのリソースが有効活用できていない」「テスト環境の構築に時間がかかる」だった。クラウド導入前、同社におけるプロビジョニングのステップは34に上るうえ自動化されておらず、使われていないイメージは50個もあったという(1イメージ当たり1,000ドル)。さらに、サーバの稼働率は5%~8%と低く、同社の環境は人手便りの「伝統的な企業のIT環境」(ヌーン氏)だったというわけだ。
そこで、「Tivoli Process Automation Platform」などを導入することで、IBM System p5/6サーバのLPAR上のAIXのデプロイ、VM Wareによって仮想化されたx86サーバへのLinux/Windowsのデプロイが可能になり、結果、3年間で100万ドルの削減を果たしたという。
同氏は企業でクラウドを導入する際の注意点についても触れた。クラウドの導入はビジネスプロセスに大きな影響を与えるので、必ず、トップ主導で行うべきだと指摘。加えて、ステークホルダーのマネジメントには細心の注意を払う必要があり、エキスパートからの支援を受けるべきだという。
最後に、「クラウドはまだ技術として完成していないが、成熟するまで待つ必要はないと思う。今でも十分に価値をもたらす」として、クラウドの技術としての有効性を強調して、同氏は講演を締めくくった。