2009年1月1日よりグーグルの代表取締役社長に就任した辻野晃一郎氏

グーグルは26日、1月1日付けで同社社長に就任した辻野晃一郎氏による年頭挨拶を報道陣に向けて行った。昨年、誕生から10周年を迎えたGoogleは米国を中心としながら、世界規模で順調にビジネスを展開してきたが、辻野氏は「これまでは米Googleを中心とした"1-Google"をポリシーに掲げ、現地法人はどちらかといえばトランスペアレント(透明)な存在だった。この段階を"フェーズ1"とするならば、次は現地インダストリーとしての独自性を生かした"フェーズ2"へと転換していくとき」と語り、日本法人としてのローカル色を強めていきたいとしている。

辻野氏は、2008年のグーグルについて「全体的にとても良い1年だった」と振り返り、とくにサーチおよびモバイルにおいて「パートナーとの関係を深めることに成功した」と総括している。日本におけるビジネスをローンチした当初からのパートナーであるニフティ、ビッグローブといった大手プロバイダとの関係をより緊密にし、サーチビジネスを大きく伸ばすことに成功したほか、ドコモとの提携でモバイルビジネスでのシェアを拡げることに成功したことが大きいという。

その上で、今後は「米国中心のビジネスだった"フェーズ1"を土台に、日本の独自色を強めた"フェーズ2"へと変わっていくとき。今後は、日本法人の代表として、自分の顔を見せて仕事をしていきたい」とし、日本法人のトップとして積極的にコミットすると表明した。

一方で、プライバシーの侵害として取り沙汰されることが多かったWebサービス「Googleストリートビュー」について、「ユーザのニーズを押さえた地図検索サービスとして、飛躍的に拡がったと考えている。さまざまなご意見をいただいたが、ひとつひとつ真摯に受け留め、対応を考えていきたい」としている。また、米国のオバマ大統領誕生に大きな役割を果たしたとされるYouTubeについては、「日本でも最も利用されているビデオサービスであり、また日本のトラフィック量は米国に続いて第2位。モバイル環境でも利用できるようになったので、今後さらに利用シーンが増えると見ている。米国ではEric Shmidt(Google CEO)がオバマ大統領にさまざまな助言をしているが、日本でも国益につながるような仕事があれば、コミットしていきたい」という。

グーグルの重要な収入源である広告ビジネスについては、世界的不況の真っ只中にあって、これまで順調に収益を伸ばしてきたグーグルであっても「成長が鈍っている事実は否めない」(辻野氏)という。「この不況に加え、競合も多い中、健闘しているほうだと思っている。だが、そろそろAdWordsやAdSenseに代わる新機軸を考える必要がある」とし、新たな広告収入モデルを検討していることを明らかにした。

日本では大きく報道されることが少ないエンタープライズソリューションについては、「クラウドコンピューティングが注目される中、ホスティングサービスへの問い合わせが多くなってきた。企業向けソリューションであるGoogle Appsと共に、企業をエンパワーするサービスとして、またグーグルの新しいレベニューソース(収益源)として、フォーカスしていきたい」としている。

グーグル 製品本部長 徳生健太郎氏

辻野氏は社長就任前はグーグルの製品企画本部長を務めていたが、今後、同氏に代わって米Googleで製品開発に当たっていた徳生健太郎氏が製品本部長として指揮をとる。徳生氏は"グーグル"という日本法人のテーマとして、「日本のユーザのためのサービスの提供」「日本からのアイデアや製品を世界へ発信」「Googleのミッションの実践」を掲げ、日本度独自のサービスおよびその世界的発信、さらに"情報の民主化"を進めていきたいと語り、ローカル色を土台にした国際化(internationalization)を展開していくとしている。