三洋電機の代表取締役社長である佐野精一郎氏 |
三洋電機と新日本石油(新日石)は1月23日、薄膜太陽電池の製造・販売を行う合弁会社「三洋ENEOSソーラー株式会社」を設立したことを発表した。
三洋電機の代表取締役社長である佐野精一郎氏は、「これまでドイツや日本といった補助金制度を打ち出した国で太陽電池市場が拡大してきた。米国でも新大統領になり、"グリーンユーディール政策"を掲げ、太陽光発電の積極的な導入などを検討し始めている。この動きは世界に拡大する兆しを見せており、太陽電池市場はさらなる成長が見込める」とし、「結晶系の太陽電池の市場規模は2008年度から2020年度の間に10倍に拡大、薄膜系は同30倍に達する」(同)との見かたを示し、2020年には合わせて40GWの市場となり、市場規模も10兆円の産業になるとした。
同社は、量産レベルで変換効率17.3%、研究レベルで変換効率22.3%のHIT(Heterojunction with Intrinsic Thin laye)太陽電池の量産を行っているが、今回の合弁会社では同太陽電池ではなく、a-Siを用いた薄膜太陽電池の生産を行う。なお、HIT太陽電池について佐野氏は、「2008年度の生産能力は340MWだが、これを2010年度には700億円をかけて600MW規模まで拡大させる」としたほか、従来のHIT太陽電池に比べ発電量を30%向上させることができる両面発電モジュール(HITダブル)のグローバルでの生産体制を今年度中に構築するとした。
新日石の代表取締役社長である西尾進路氏 |
また、新日石の代表取締役社長である西尾進路氏は、「新日石は顧客のニーズにあったエネルギーを安定供給してきた。また、低炭素社会の実現に向けコジェネレーションシステムなどの提供を行ってきたほか、水素の貯蔵技術の開発なども行ってきた。これに太陽電池を組み合わせることで、総合エネルギープロバイダを目指す」と新会社の役割を説明する。
また、「新日石として合弁会社を強力にサポートしていく」とし、「その1つとして、ガス原材料のハンドリング技術が挙げられる」(同)ことを強調、石油製造に伴う多様なガスの活用技術は太陽電池にも活用できるとした。
さらに、同社の持つ海外販売ネットワークの活用も提示、「"グリーンニューディール政策"により太陽電池の需要は拡大することが確実であり、無電化地域への自力発電能力の提供、中東・アジアでの発電所としての役割なども考えられる。新日石の販売網を活用することでこうした市場に参入できるようになり、それらで強みを発揮することで薄膜太陽電池分野のリーディングカンパニーを目指す」とした。
新会社の概要は、以下の通り。
会社名 | 三洋ENEOSソーラー株式会社 |
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資本金 | 2億円(資本準備金:2億円) |
設立日 | 2009年1月23日 |
代表者 | 代表取締役社長 五十嵐未知人 (前 三洋半導体 ビジネス開発室 室長) 代表取締役副社長 湯原尚一郎 (前 新日本石油 国際事業本部 薄膜太陽電池プロジェクト室 室長) |
本社所在地 | 東京と文京区本郷3-10-15 |
出資比率 | 三洋電機50%、新日本石油50% |
事業内容 | 薄膜太陽電池の製造技術の開発・製造および販売 |
新会社の基本路線としては、「三洋の持つ薄膜太陽電池のデバイス技術力とHIT太陽電池の生産技術力、信頼性技術力と新日石の持つ石油精製・石油化学品製造で培ってきた原材料技術力および総合エネルギープロバイダとしてのグローバルネットワークを生かして事業化を加速していく」(佐野氏)である。
具体的には2010年度までに日本国内に年産80MW規模のマザープラントを200億円程度投資して設置する。場所は研究開発を行っている三洋の岐阜工場(岐阜県安八町)に建設予定で、当初の計画としてはa-Siと微結晶Siによるタンデム構造を採用、変換効率10%のパネルの製造を行う。販売するモジュールのサイズとしては1.1m×1.4m程度を考えているとのこと。
また、2015年度までに変換効率を12%に引き上げる。生産規模も拡大、グローバルに生産拠点を拡大し、年産1GWの生産規模を確保する計画するほか、2020年度には年産2GWを達成する計画である。
なお、薄膜太陽電池は結晶系太陽電池に比べて発電効率自体は低い。そのため、新会社では、一般家屋の使用よりも大規模発電プラントや産業分野などへの展開を狙っていくという。