ロボットベンチャーのテムザックと警備会社のアラコムは、携帯電話を用いて遠隔操作が可能な警備ロボット「T-34」を発表した。操作に使用できるのはNTTドコモのFOMA携帯のみだが、特別なアプリケーションを入れる必要はなく、そのまま使うことができる。また、インフラとして携帯電話を用いるため、ロボットを用いる施設内にLANを構築したりする必要もない。
T-34は、テムザックがすでに商品化している家庭用留守番ロボットで採用したシステムを、個人ではなく施設向けの機能を追加することで開発コストを抑えている。T-34の大きさは全長60cm、幅52cm、高さ60cm、重量12kgで、試作段階である現在で、価格はおよそ80万円。販売時にはさらに低価格化を図り、50万円を切る予定とのこと。
この警備ロボットは、監視システムとしての機能と、異常を感知した際の現場を調査し、初期対応を行うためのデバイスとしての機能を持っており、警備したい場所にロボットを置きさえすれば、何の機械警備システムもない屋外でも、すぐに警備システムとして運用を開始できる。安く、早く、ロボット単体で簡単に導入できるというのが、この警備ロボットのメリットだ。
不審者や異常事態を感知するために、熱源(人や猫など、熱をもつもの)を察知する人感センサ(赤外線センサ)と、音を察知する音センサが搭載されている。人感センサにより5m以内に熱源を検出した場合、あるいは音センサが、例えばガラスの割れる音や大きな音など、ある音域以上の音を検出した場合に、ロボットは登録された携帯電話に異常を通報する。携帯電話には、ロボットに搭載されたカメラからの画像が送られ、ユーザは現場の状況を確認することができる。また、カメラ画像を確認するだけでなく、携帯電話のキーによってロボットの移動操作が行えたり、スピーカーを通じて不審者に警告を与えたり、威嚇することもできる。
T-34で追加された機能は、屋外や広い施設での運用を想定した高い走行性能と、防犯対策機器「ネットランチャー」だ。T-34の最高速度は10km/hで広い場所をスムーズに警備できるという。建物内で不審者が走って逃亡する際の速度はおよそ6km/hで、テムザックの高本陽一社長によると、「10km/hで走行できれば、人の追跡にも十分対応できる」とのこと。また、ネットランチャーは、携帯電話の「発射」指令に対応するキーを押すことで、勢いよく網を飛ばし、不審者の動きを封じるのに役立てることができる。ネットランチャーの搭載可能数は2つ。
アラコムの西村日出穂社長は、「警備員の安全性を高めたり、誤報による出動をなくすには、現場の事前の情報確認をどう実現するかが課題。ロボットには、その役割を期待している」と語る。また、完全自律型のロボットは理想的だが、開発には非常にコストがかかり、実用化も容易ではない。テムザックの高本社長とアラコムの西村社長は、「これからも自律移動型の警備ロボットの開発には力を入れていく」としながらも、一方で、「ロボットの普及には、機能は高いが高価で実用化が難しいものよりも、機能は低くても安く、実際に導入できるものを作って広めることが重要」と語った。
なお、両社では、今後もセンサやネットランチャーの配置など、より最適な形体を追求していくとしており、1年以内の商品化を目指すとしている。