ルネサス テクノロジは1月19日、カーナビゲーション機器や次世代車載情報端末機器などに対応するSoC「SH7776(SH-Navi 3)」を製品化したことを発表した。2009年4月よりサンプル出荷を開始、サンプル価格は1万2,000円としている。量産は2010年1月より月産1万個で開始、2013年1月には月産10万個に引き上げるとしている。

画像認識処理機能内蔵デュアルコアSoC「SH7776(SH-Navi 3)」の外観

(ルネサス テクノロジ マイコン統括本部 自動車事業部 副事業部長 山内直樹氏)

自動車の電子化は年々進んでおり、調査会社の米Strategy Analyticsおよびルネサスの調査によれば、「電子制御ユニットのコスト比率は、1980年頃1%だったものが2005年には22%、2015年には40%となることが見込まれる。また電気自動車ではさらにその比率は増える」(同社マイコン統括本部 自動車事業部 副事業部長 山内直樹氏)という。こうした現状を踏まえ、同製品は、「2014年を目指した戦略デバイス」(同)になるという。

自動車における電子制御ユニットのコスト比率の推移

同製品は、「2010年以降の車載機器に使用してもらうために2年以上の歳月をかけて開発した」(同)SoCであり、カーナビを単なる地図情報を示す機器から、自動車の快適、安全、環境配慮を図るための車載情報制御の中核としての「次世代車載情報センタ」へと引き上げることを目指したデバイス。

車載機器向けSHシリーズのロードマップ

主にハイエンド車種への搭載を見込み、同社の32ビットCPUコア「SH-4A」を2個搭載し、533MHz動作時に最大1920MIPS(960MIPS×2)の処理性能を実現したほか、周辺機能を1チップ化している。プロセスは同社の携帯機器向け65nmプロセスを採用することで、「低消費電力を実現した」(同)という。なお、CPU周辺に関しては2008年8月に発表した汎用のデュアルコアプロセッサ「SH7786」と同じアーキテクチャを採用しているという。

次世代車載情報端末のアプリケーション例

ルネサス テクノロジ 自動車事業部 自動車応用技術第二部 部長 平尾眞也氏

また、画像処理エンジンとして、自社のグラフィックスプロセッサを採用し、3D地図などに対応するほか、Imagination Technologies(IMG)の提供する「PowerVR」シリーズの次世代グラフィックスコア「SGX」も搭載、画素単位の演算を行うシェーダエンジンを搭載することで、従来品に比べ、ポリゴン性能を約2倍向上、映り込みなどをよりリアルに表現できるようになったという。これにより、「高度な3Dグラフィックス技術を必要とするGUIなどにも対応が可能となり、アルバムジャケットの表示などを3Dのメニューで表示することが可能になる」(同社 自動車事業部 自動車応用技術第二部 部長 平尾眞也氏)という。

また、2つのグラフィックス機能を内蔵することで、2つのディスプレイに画像を別々に表示することが容易となり、ナビとエンタテイメント、各種メニューなどを分けて表示することができるようになるという。

2つのグラフィックス機能により、用途に適した描画が可能に

このほか、画像認識処理IPや歪み補正モジュールを搭載。これにより、カメラ画像データのリアルタイム認識処理が可能となり、白線認識や標識認識、車両検知などのほか視点変更や後側方監視/追い越し車両警報などができるようになるという。

画像処理IPや歪み補正モジュールにより、これまでできなかったさまざまなアプリケーションを実現できるようになる

なお、同社では同製品を採用した車載機器の本格展開を2012年頃とみており、それを踏まえた上で、世界1位のシェアを目指していくという。