三洋電機は、2008年度通期業績見通しを下方修正した。連結業績は、売上高が当初予想の2兆200億円から5.9%引き下げ、前年比5.8%減となる1兆9000億円に、営業利益は、500億円から40.0%引き下げ、61.6%減の300億円に、税引前損益は150億円の黒字予想から、マイナス200億円の赤字に(前年度実績は572億円の黒字)、当期純利益は350億円の予想から0(前年実績は287億円)とした。
また、国内800人、海外400人の人員削減を行うほか、半導体部門から二次電池部門に150人の人員シフトを行う。人員削減では、半導体部門の約5000人の社員のうち5~10%の社員に早期退職制度を実施するほか、海外では約100人の正社員の退職を実行する。正社員の削減規模は国内外をあわせて最大で600人規模となり、残りの削減は非正社員が対象となる。
さらに、佐野精一郎社長、事業担当の前田孝一副社長の10%減俸をはじめ、1月から半導体事業部門の担当役員、事業部長部の10%減俸を実施する。
米国金融危機に端を発する世界規模での経済情勢の混乱により、12月以降、業績が急速に悪化。なかでも、電子部品、半導体などのコンポーネント部門を中心に売上高が減少したことで採算が悪化した。加えて、急激な円高の影響や、半導体部門を中心とした追加構造改革の実施も下方修正に影響した。
三洋電機の前田孝一副社長は、「業績を支える柱となっていた電池事業が12月から利益がダウン。PCや携帯電話の生産調整の影響を受け、下期が計画に未達となった。また、為替の影響が約85億円、半導体事業の追加投資で約60億円が影響した。単独決算においても、半導体関連関係会社の株式減損での500億円を含み、675億円の減損処理が発生することが影響した」という。
「穴があったら入りたい下方修正」--前田副社長はこう語った。
前田副社長によると、11月下旬までは、当初計画としていた営業利益500億円の達成に向けて推進してきたが、11月からの半導体事業の急激な悪化をはじめ、太陽電池や二次電池などの収益貢献にもブレーキがかかりはじめたという。
「下方修正の主因は半導体事業。同事業は、上期に58億円の赤字を計上したものの、下期は構造改革の効果によってトントンを見込んでいた。だが、市況の悪化、受注の減少もあり、通期では200億円の赤字の見通しとなった。パワーデバイス分野の強化、システムLSI事業の縮小、後工程の海外シフトをはじめとする生産体制の再構築など、選択と集中を推進しているが、損益分岐点を約200億円引き下げるために、追加で構造改革を行い、来期の赤字脱却を目指す」とする。
現在、国内では3拠点、海外では、中国、ベトナム、タイ、フィリピンに7つの製造拠点があるが、「中国の拠点は4カ所を2カ所にするなど統合を進めているものの、私見ではあるが、中国を含めて海外は4拠点程度でいいだろう」などとして、海外拠点の集約を進めていく姿勢を示した。
半導体事業における追加構造改革投資は、「パナソニックとの資本・業務提携がなくても、三洋電機独自のものとして実行したもの」と位置づけた。
半導体部門以外では、AVや情報機器も計画に対して弱含みとしたほか、太陽電池は上期の90%程度に収益が減少。二次電池も利益ベースで上期に比べて3割ダウンするとした。
「通期では前年よりもいいが、これまでつっかえ棒として支えていた事業が弱くなった。太陽電池は欧州において、作ったものは売れているが、材料となるシリコンが逼迫し、生産がパンパン。また、ユーロの為替の影響も大きい。ユーロが150 - 160円で推移していたら損益はよかった」とした。
一方、中期経営計画の最終年度となる2010年度の目標として掲げている営業利益900億円については、「2009年度を布石を打つ年とし、2010年度の900億円の目標の旗は下ろさないといけない」などと語った。
設備投資については、中期経営計画期間中の3か年で3600億円を計画しているが、「初年度は1,200 - 1250億円のペースで投資している。中身を見直す必要もあるが、中期経営計画策定時には予定がなかったHEV分野への投資もあり、総額では変わらないだろう。来年度の予算編成のなかで固めていきたい」と語った。
「製造業を取り巻く状況は厳しい。パナソニックとの資本・業務提携を踏まえ、環境エナジーの先進企業としての加速したい」などとした。